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建物の基本設計

前回は意匠設計者の仕事が大変ではあるけれど、面白みとやりがいがある仕事である、というような話を紹介しました。
「面白い」とか「やりがいがある」というのは感覚的なもので、あまり具体的なものではないので、この感覚が万人に共通するものだと断言することは正直難しいところです。

人にによっては大変なだけで全然やりがいを感じない、と思ってしまう方もいるかも知れませんから、ここであまり強く私の考え方を押しつける訳にはいきませんが…
建物が出来上がった時の感覚はやはり格別なものがあると私は思っています。

東京国際フォーラム

面白くてやりがいのある仕事には、大抵の場合重い責任が付いてくるものです。
建物を設計するという仕事にはそうした話が当てはまるのではないかと思いますが、逆の考え方も当然あって、重い責任があるからこそ仕事として面白いという意見もある訳です。

責任がありすぎるとか、担当する仕事量がこなし切れないくらい膨大になってくるとかになると、単純に「やりがいがある」とかいう表現で済ます事は出来なくなってきますが…
このへんのバランスは結構難しいというか、なかなか自分が思ったような仕事量にはならない、というのが現実なのかも知れません。

多分このあたりの話は建築業界の仕事ではなくても同じでしょう。

話を意匠設計者の業務に戻すと…
意匠設計者の業務は建物を設計するだけで終わる訳ではなくて、建物が実際に施工される段階になってももちろん続いていきます。

ただ、施工段階での設計者の業務については、もう少し後で詳しく説明をしていくつもりでいるので、ここで詳しく書くことはしないでおきます。
ここではまず、意匠設計者が建物を設計する際にどのような流れで進んでいくのか、というあたりの話から考えてみることにします。

前回のカテゴリでも少し話をしましたが、意匠設計者が建物を設計する際にまず着手するのは「基本設計」という業務になります。
基本設計というのは何かと言うと、建物を建てるプロジェクトの序盤で、施主の要望などを聞きながら建物の大まかな計画をしていく段階になります。

建物を建てようとしている場所がどんな敷地形状なのか、法的な敷地の種別はどのようなものになるのか、建物の用途は何になるのか。
こうした与条件によって、建物の規模や構造や形状は大きく変わります。

決められた敷地条件や予算がある中で建物の計画をする訳ですけど、できる限り敷地条件の中で余裕をもったプランにしたくて、なおかつデザインも優れた建物を造りたい。
…というようなことを建物を建てる側として考えていて、そうした要望を決められた予算の中で何とか計画出来ないか、という仕事を設計者に依頼することになります。

例えばの話ですが、建築プロジェクトの予算に制限がなければ、どのような計画であったとしてもある程度は実現することが出来ます。
敷地が狭い場合は広い敷地を購入すれば良いことになりますし、デザイン的にも見映えが良いけれど高額な仕上げ材をいくらでも選定することが出来ます。

もちろん、高額な仕上げ材を使えば良い建物が出来る、という程単純な話では絶対にないわけですけど、それでも様々な選択肢の中から選ぶことが出来るというのは有利に違いありません。
エントランスホールなどメインとなる部屋の床や壁には石を貼りたくなったりしますが、予算がない場合は石っぽく見える塩ビ系の仕上げ材を選択するしかない、ということもあります。

しかし充分な予算があれば、石の種類をどうするかなどの選択肢も広がっていき、結果としてちょっと特殊な雰囲気の空間を作ることが出来るかも知れません。
予算があればそれでOKという訳ではありませんが、予算があればあるほど良い建物が出来る可能性は確実に高くなっていきます。

しかし実際には、予算が余るほどあるというようなことは多くありませんから、限りのある敷地や予算や時間の中で、できる限りより良い建物を計画する、ということになります。
だからこそ設計者が知恵を出して色々考えていく訳ですが、逆に様々な制限があるからこそ建物の計画は細部まで煮詰まっていく、ということも言えます。

何も条件がなく、何をやってもOKということになると、縛りが少なすぎて逆になかなか計画は進んでいきませんから。

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