前回は簡単にではありますが、衛星設計の業務について考えてみました。
建物にとって水はなくてはならない存在である為、水廻りの設備である衛生設備も同様になくてはならない存在になっています。
水廻りの使い勝手が良くない建物は使いにくいものですから、そのあたりを考える衛星設計の役割は重要なものになっていきます。
もちろん使い勝手については意匠設計も検討をしていくので、意匠設計と一緒に検討を進めていく事になると思います。
水を運んでいく配管というのは基本的に見えないところへと配置されることになるので、見えない部分で色々と苦労をする事になるのですが…
今回はそうした天井裏に配管を隠す際に苦労をする点について考えてみます。
衛生設備の配管を平面的に移動していく際には、基本的に天井裏スペースを通していき、配管を下に落とす際には壁内で落としていく事になります。
そうした検討をしていかないと配管が室内側に見えてしまうので、見た目が悪くならないように天井裏や壁内に隠蔽していく訳です。
ただ、天井内には配管だけではなくダクトや電気のケーブルラックなどがありますから、衛生設備の事だけを考えて天井内レイアウトを検討する訳にはいきません。
天井内にあるダクトやケーブルラックなどをかわした位置に配管を配置していく、もしくはその逆で配管をかわした位置までダクトを逃げていくなどの検討が必要になります。
とは言っても、それでも配管の径がそれほど大きくない事を考えれば、天井内配管の検討は比較的気持ちが楽ではありますが…
ただ、空気の通り道であるダクトと違って、中を通るのは水やお湯などの液体になる、というのが衛生設備の難しいところ。
水は高いところから低いところに流れる、という絶対的なルールがありますから、配管はその流れを考慮して勾配をつけてあげる必要がある。
これが衛生設備配管の最も厄介なところです。
例えば衛生設備配管に勾配をとっていく検討をした中で、配管のレベルが低くなりすぎて天井よりも下がってしまう、というような問題がよく発生します。
しかしいくら配管のレベルが天井よりも下がってしまうからと言って、配管の途中で段差をつけて配管レベルを上げる、というようなことは出来ないんです。
当たり前の話ではありますが、重力という覆せない法則がある限り、水を流す場合には配管に勾配をつけるという検討がどうしても必要になってきます。
配管レベルを検討していく中で、どうにも勾配が取れないような状況もあったりして、勾配をつけないでおきたくなる場合もありますが…
そんなことをしたら水が流れなくなってしまうだけで、それでは手間をかけて配管をつないでいく意味が全然なくなってしまいます。
それでは本末転倒ですよね。
配管の経路としては上の階から下の階にという流れになり、その際にはコンクリートスラブを貫通することになるので、そのあたりも検討していく必要があります。
貫通部にはあらかじめ開口補強鉄筋を入れておく事が構造設計から定められていて、そのあたりの細かい検討や調整が色々と必要になります。
これは衛生設備だけの話ではなく、電気・空調など全ての設備工事で共通して言えることで、天井内のレイアウトを検討してシャフト位置を決め込んでいく作業が必要になります。
その上で床コンクリートを貫通する場所を決めていく事に。
このあたりの細かい話は設計段階よりもむしろ施工段階になりますけど、大きな給水や排水などの流れを検討するのはやはり設計者の役割になります。
もし配管から水が漏れるような事があると、建物が水浸になるというリスクがあるので、衛生設備の責任は重大だと言えるでしょう。