建物を建てていく為の基本方針として、設計者が作成する設計図がある訳ですが、設計図だけで実際の施工を進めることはなかなか難しいものがあります。
設計図はあくまでも建物の基本的なプランや外形などの大きな部分を表現しているものなので、細かい部分まで表現が出来ないという現実があるんです。
設計図で充分に建物の基本方針は表現されていて、建物の基本的な考え方を説明するという役割は果たしていますが…
実際の施工を進める為には、もう少し具体的な情報が必要になるんです。
設計者の役割は建物の方針を設計図で示す事であって、具体的にどのようなやり方で施工を進めるかという寸法まで示す必要はありません。
そのあたりの具体的な検討は施工者の役割になるので、施工者は設計図の情報をベースにしてもう少し細かい部分を表現する図面を作成します。
そうして作成された図面を「施工図」と呼びます。
施工段階に入る少し前から施工者は設計図を元にして施工図を作成していき、出来上がった図面を設計者に提出していきます。
設計者は提出された施工図の内容を確認して、設計の意図に沿っているかどうかをチェックして返却しなければなりません。
返却された図面の内容を修正して、そのチェックに込められた意図を汲み取った図面を再度提出して、最終的には設計者に承認を受けるまでこれを繰り返していきます。
実際の施工を始める前には、その部分の施工図が設計者に承認されていて、その施工図をベースにして工事を進める、というやり方が基本的な進め方になります。
施工者としてはこうして施工図を作図する事によって、具体的にどのような施工をすれば良いのかの指針となる図面が出来上がるというメリットが。
設計者としては、実際にどのような施工をするのかを図面で知る事が出来るので、細かい部分にまで自分の考え方を反省させる事が出来るというメリットが。
施工図を作成することによって、設計者も施工者も大きなメリットがあり、だからこそ施工者は膨大な手間をかけてまで施工図を作成するんです。
こうした設計図から施工図への情報の伝達があるからこそ建物は少しずつ具体的になっていき、実際に建物を造る前に完成形の共通認識が出来上がる訳です。
こうして施工図ベースでの調整を繰り返しながら施工を進めていき、おおよそ建物が出来上がった時点で外部から電源を引き込む「受電」を迎えます。
外部から正式に電源を引き込むという事はつまり、既に取り付けてある照明器具やコンセントなどが実際に使えるようになる事を意味します。
ここまで来ると建物は完成間近です。
実際に建物を建てていくプロセスを経験してみると本当によく分かりますが、照明器具が点灯されると本当の建物らしくなってくるものです。
このあたりは忙しいですが楽しい時期でもあります。
後は少しずつ建物の完成度を高めていって、外構工事を進めたり植栽を入れたりなどの工事を進めていき、最終的に竣工引き渡しを迎えることに。
植栽を入れる前の建物と入れた後の建物では、もう「工事現場」と「完成した建物」というくらいの違いがあります。
これは当たり前すぎる表現ですが、実際に植栽が入ってくると一気に建物の雰囲気は変わってくるもので、照明器具が点灯した時よりも建物は限りなく完成に近づきます。
こうして建物は竣工を迎え、施主に無事引き渡しが完了する訳です。
建物を造っている期間は設計者と施工者が主役という感じですが、引き渡しが完了したあとは施主が建物を実際に運用していく為に色々な準備を進める事になります。
机や椅子やロッカーなどの備品を搬入して、建物の用途によってはスタッフを配置して訓練したりを進めて建物を実際に使う段階に進めていきます。
