建物が施工段階に入り順調に工事が進んでいくと、内装工事がある程度完了した段階で「受電」と呼ばれる電源を引き込む為のイベントがあります。
それまででも建物内では照明を点けたり電動工具を使ったりなど、電源は用意されているものですが、それはあくまでも仮設の電源。
実際に建物として電気を使う為には、外部から電源を正式に引き込んでいく必要があって、当然使用した電気の料金も支払う必要があります。
その為に必要な手続きを受電と呼び、もちろん建築としても重要な節目になりますが、電気設備によってはまさに一大イベントという感じになってきます。
受電が完了したと言うことはつまり、ある程度建物は完成しているという事になる訳ですが、そこからは色々な立場の方からの検査がメインになってきます。
設計者の検査だけではなく、施工者としての自主検査もありますし、施主による検査とか消防による検査など、様々な検査が竣工日までに何度も繰り返されます。
施工者はそうした検査で指摘された項目について、細かく是正をしていく作業を繰り返していき、建物の完成度を少しずつ高めていく事になります。
検査対応は確かに大変ではあるのですが、色々な立場や業種の方が出来上がった建物を見て、最終確認をしていくというのは建物にとって非常に有益ではないかと思います。
様々な検査を受けてその是正までを確認して、建物はようやく完成を迎えることになります。
完成と言っても、それはあくまでも施工者が施主と契約している工事が完了した状態を指していて、建物が実際に運用可能になる状態とイコールではありませんが…
それでも、建物の形が完全に出来上がった状態で、実際に建物を運用する施主に建物を引き渡すことで、建物の施工も一段落という事になります。
こうして建物を完成させて施主に引き渡す事を「竣工(しゅんこう)」と呼びます。
設計者と施工者という立場の違いはあっても、どちらも建物が竣工を迎える事を目指して様々な業務をこなしている訳です。
なので、その建物が完成した状態でお客さんに引き渡す事が出来るという時点で、建物を造るプロジェクトとしては本当に一段落という感じになります。
竣工引き渡しの日時は工事着工の時から決められています。
この日時は余程の事がない限り変わりませんから、たとえどんなトラブルがあったとしても(というかトラブルは必ずあります)、契約した通りに建物を引き渡さなければなりません。
このあたりの工程管理は施工者の大きな業務になっているので、それが滞ることなく完了したのであれば、やはり大きな肩の荷が下りたと言えるでしょう。
引き渡し日の重要性について少し例を挙げてみると、マンションを建てるいというプロジェクトで設計や施工を進めている場合の状況を考えてみましょう。
マンションを購入する人の立場で考えてみると、工事で色々あって予定通りにマンションが完成しなかったので引っ越しを少し延期して欲しいです、とか言われても困りますよね。
子供の入学にあわせて引っ越しを計画することも多いはずで、そうした都合を施工者側の都合でつぶしてしまう訳には絶対にいきません。
もし完全に施工者側の都合で竣工が遅れてしまった場合には、間違いなく金銭的な保証をする必要が出てくるはずなので、工程を守ることは最重要ポイントだと言えます。
そうしたプレッシャーと一緒に仕事をしている施工者としては、やはりほっと一息という感覚もあるというのが正直なところでしょう。
建物が予定通りに竣工を迎えられるようにコントロールしていくのが、施工のプロとして当然守るべきことではあるとしても。
という事で、様々なトラブルを解決しながらも建物を施主に引き渡すことが出来れば、施工者の役割は概ね完了ということになります。
建物を造っていくという仕事はとても大変ですがやりがいのある仕事で、このあたりの時期がやはり設計者にとっても施工者にとっても一番嬉しい時期ではないかと思います。