今までの説明では、何もない状態から建物を建てる計画を立てていき、その計画に沿って実際に建物を施工していく、という流れを簡単にではありますが説明してみました。
実際の仕事はもっと色々な業務が絡み合って複雑なものになってくるのですが、大まかな流れとしては今まで説明してきたような感じになってきます。
こうして建物の計画から竣工・実際の運用までの大まかな流れについて説明をしてきた中で、「設計者」とか「施工者」などの表現を頻繁に使ってきました。
まずは設計者が建物の計画を進めてその方針を設計図に盛り込むとか、その設計図をベースにして施工者が工事を進めるとか、そうした話ですね。
建物が出来上がるまでの大まかな流れが「設計→施工→竣工→運用」という感じだったので、自然とそうした表現をしてしまいましたが…
実際に建物を造っていく中で、そのあたりにの細かい役割が具体的にどうなのかという説明はまだ出来ていません。
という訳で…
建物の設計段階から施工段階、そして竣工後の運用という工事の流れに対して、様々な企業がどのような役割を果たしていくのか。
今回はそのあたりの話を取り上げてみたいと思います。
まずは実際に建物を建てていくプロジェクトが始まってから完了するまでには、本当に様々な企業がそのプロジェクトには参加する、という話から。
建物が完成するまでには様々な分野の業務があって、それぞれの業務をさらに分類していくと本当にたくさんの仕事がそこには存在しています。
そうした多種多様な業務の全てを1つの企業が請け負うのは、物量的な観点から見ても、業務の専門性という観点から見ても、なかなか難しいものがあります。
もう少しはっきりと書いてしまうと、建物を造っていく為に必要な業務を1つの企業だけで全てこなしていくのは無理です。
これは少し具体的な例で考えてみるとよく分かります。
例えば建物の設計業務を専門とする企業はたくさんありますが、施工段階の業務、例えばタイルを貼る仕事も同時にこなす事が出来る企業は恐らくないはず。
建物を設計する業務と、タイルを製作したり販売したり実際に施工したりする業務がかなりかけ離れている、というのがその大きな理由でしょう。
実際にタイルを製品として作っていく工場を用意して、その工場が遊んでしまわないように一定のペースでタイルを販売していく。
これは設計業務をしながら片手間に出来るような業務ではありませんから。
また、製品として作ったタイルを運搬して、そのタイルを現場で実際に貼っていく事になる訳ですが、そこでは当然作業をする職人さんも必要になってきます。
さらにはその職人さんの仕事がなくなってしまわないように、常に一定量の仕事量を確保していくことも必要になってくる訳です。
そうしないとタイルを貼る職人さんは別の仕事をするようになってしまうので、いざたくさんタイルを貼る必要がある、という場合に職人さんがいなくなってしまいます。
などなど、ほんの一例として建物を構成する材料の一部であるタイルに関わる業務について書きましたが、タイルだけでも様々な業務がある訳です。
それを1つの企業だけでこなすのは非常に難しい、という話でした。
もちろん設計業務とタイル工事だけに限った話ではなくて、建物を構成する細かい工事それぞれでも同じような話になってきます。
コンクリートを打設する為の型枠を施工する事を専門にしている企業であれば、やはりタイル工事にまで手を出すのは難しいし、その逆も当然難しいものがあります。
なので、それぞれの業務を専門にしている企業がたくさんあつまって、ひとつの建物を造っていくプロジェクトに参画する事になる訳です。