設計者や施工者にとっては建物を竣工まで無事に進めていき、施主に建物を引き渡す事が出来れば仕事としては一段落という感じになります。
しかしそれだけで建物を運用することが出来る訳ではなく、そこからは施主が建物の運用開始まで色々な作業を進めていく事に。
そうした流れになるので、設計者や施工者が竣工を目指して工事を進めていく事とは別に、施主はその竣工と前後して色々な準備や工事などを進めていきます。
こうした業務はかなり慌ただしくなり、場合によっては設計者や施工者が進める工事にも若干影響が出る場合もあったりします。
建物が竣工するというあたりの項目でも少し書きましたが、建物が竣工したと言ってもそれで完全に建物の運用が出来る訳ではない、といのが現実です。
例えば造り付けではない家具やカーテンなどの備品関連は、大抵の場合は施主が用意することになるので、それらの備品を搬入したり取り付けをしたりという作業が必要になってきます。
建物が竣工したとは言っても、その翌日から竣工した建物をすぐに利用する事が出来る訳ではない、というのはそうした意味合いがあるんです。
建物が竣工したという時点では、とりあえず建物の基本機能を満たしている状態の大きな箱が完成した、というようなイメージではないかと思います。
色々と必要なものを入れ込んでいくには、まず箱が出来ていないと始まらないということで、それが建物の竣工という区切りになる訳です。
建物の用途にもよりますが、例えば病院とかであれば、そこから病室のベッドや、処置室などに配置する為の医療器具を搬入するなどの準備が始まります。
また、商業施設などであれば店舗で働くスタッフのトレーニング期間も必要になってくるので、建物の竣工からオープンまでの間にそうした準備期間を予定しておく必要があります。
これはどのような建物でも似たような話になるはずで、例えマンションなどの建物で不特定多数の人が使う訳ではない建物でも、それは同じです。
マンションであれば、そこで生活していく方が持っている家具や食器などの家財道具を引っ越しという形で搬入していく必要があるでしょう。
人が住む為のマンションだけではなく、病院でも商業施設でも同じで、人が利用する以上はどうしても家具などの備品は必要になってくるはず。
要するに、どのような用途の建物であっても、建物が竣工してから実際に運用を開始するまでにはしばらく時間がかかる、という事です。
準備がどの程度必要になってくるのかは建物の用途や規模によって違ってきますが、準備が必要という事に違いはありません。
大抵の建物では、その建物が施設として運用開始するオープン日を利用者に向かって大々的にアナウンスするものです。
なので、建物の竣工引き渡し日から建物のオープン日までの間に諸々の準備をしていくことになり、必ずしも時間がたっぷりあるという訳ではありません。
こうしたことを考えると、竣工引き渡しのスケジュールが工事の遅延、つまりは施工者の都合でずれてしまうことがどれだけ大きな影響を与えるのかが分かると思います。
こうした様々な準備を経て、ようやく建物は本当に完成して運用が始まります。
その形態は建物の用途によって様々です。
例えば商業施設であればグランドオープンを迎えることになり、オフィスなどであれば新しい建物での業務開始になり、学校であれば授業が始まることになる訳です。
ちょっと大げさな表現をすれば「建物に命が吹き込まれる」ということになるかと思います。
設計者であっても施工者であっても、この瞬間の為にあらゆる知識や技術を注ぎ込んでそれぞれの仕事をしています。
もちろん運用開始がその建物のピークということにならないように、デザインが優れていて使い勝手が良い、本当に息の長い建物を造ることに全力を尽くしていく、ということになる訳です。