実施設計段階が完了して色々な手続きが完了すれば、あとは実際に建物を施工していく段階に進んでいき、基礎工事や杭工事など建物の土台を造る工事から着手していく事になります。
建物の基礎は基本的に地面の中にあるものですから、基礎を施工する為にはある程度土を掘っていく作業が必要になってきます。
土を掘っていく為には、残す側の土が崩れないような対応が必要になる場合が多く、そうした対応を「山留工事」と呼びます。
山留工事を進めながら少しずつ土を掘っていく、という「土工事」が建物を施工する際にまずは必要になってくる作業になります。
建物の規模にもよりますが、掘った土を場外に搬出しなければならないなどもあって、こうした土工事には結構時間がかかってしまうものです。
なかなか建物を実際に造っていく工事に最初からは進めない、という現実がある訳です。
ただ、土を掘っていく期間は建物を実際に造っていくことが出来ませんが、図面を使って色々な部分を検討して調整していく事は出来ます。
鉄筋工事や型枠工事などが実際に始まってしまうと、それこそ一気に工事が進んでいくことになるので、実際には土を掘っている期間というのは貴重な検討期間でもあるんです。
土工事に時間をかけている間に、まずは基礎関連の納まりを検討して基礎工事を開始できるようにしておく事が大きなポイントです。
もっと理想的な話をすると、鉄骨の納まりや地上階の納まりなども決まっている方が施工はスムーズに進むのですが…
建物には検討すべき項目は結構たくさんあるので、そこまで理想的に仕事が進むようなことは少ないのではないかと思います。
もちろんそうした理想的な状況を目指して施工者と設計者で頑張るのですが、単純に物量が多いという事もあってなかなか難しいはずです。
こうして工事の流れと図面での検討を進める事とのバランスを取りつつ工事を進めていき、建物は少しずつ完成に近づいていく訳です。
建物の外壁が完成して内装工事が進んでいく、というのは建築的な工事の進行になりますが、そうした中で設備的にも大きな節目があります。
それが今回紹介する「受電(じゅでん)」です。
敷地外に通っている電線から電気を供給してもらい、建物の中で正式に電気が使えるように、建物内に電源を引き込むことを受電と呼びます。
もちろん受電の前であっても、夜になったら照明を付けるとか、仮設事務所のコピー機やパソコンの電源など、工事を進める為には電気がどうしても必要になります。
しかしそうした電源はあくまでも工事のために使用する電気でしかありません。
工事を進める為に必要な電源は、あくまでも一時的なものですから、工事中の建物に供給するための仮設電源という扱いなんです。
当たり前の話になりますが、施工を進めている建物本体に正式な電源を供給しなければ、建物を運用していくことは出来ません。
いくら内装工事と電気工事が進んできて、壁にコンセントや照明のスイッチを取り付けたとしても、きちんと電源を引き込まないとコンセントにプラグを差し込んでも電源は供給されません。
建物に取り付けたコンセントを実際に使えるようにして、取り付けた照明器具のスイッチを付ければ照明が点く状態にする。
その為にはメーターを通過して電源を引き込む必要があって、そうした手続きや工事などを含めて「受電」と呼びます。
建物に電気を供給する訳ですから、雨が降った時に室内がびしょびしょになってしまうような状況では危なすぎて受電などは出来ません。
タイミングとしては建物が完成する少し前、工事全体の終盤に行われることになり、施工する側にとってはかなり大きな節目になってきます。
受電予定日は工程表によってある程度決まっていて、受電前には壁や建具などが一通り施工されている必要があります。
なので、受電のスケジュールを守って竣工までをスムーズに進める為、建築工事が遅れてしまわないよう施工者は工程管理に気を遣っていく事になります。