建築の納まりについてどれだけ知識を吸収したいと思っているかは人によって違う、という話を前回は取り上げました。
だから自分が持っている感覚で「仕事で使うのならば誰もが積極的に建築の知識を求めているはず」という考え方はちょっと違うんですよね…
建築に関する仕事を人に教えるのは自分にとっても非常に勉強になるものですが、仕事に対するスタンスを押しつける教え方は危険なので、そこは注意が必要です。
これは確かに事実ではあるのですが、建築の納まりというくくりで言えば、ちょっとそのテーマから外れつつある内容かも知れません。
このカテゴリでは「納まりの検討を進めるにあたって気を付けておきたい点」というテーマで色々と書いてきました。
ただ、こうした気持ちの持ちよう的な話が続くという事は、そろそろ具体的な内容について書くことがなくなってきたのかも知れません。
建築の納まりについて具体的な内容がなくなってきても、それ以外の部分で書きたいことは結構たくさんあるのですが…
具体的な話からそれてしまうと、それこそ脈絡のない話になってしまうので、このあたりでそろそろ終わりにしておこうと思います。
他に伝えたい事が出てきたらその都度追加していくことにして、今回は今まで説明してきた内容をざっと駆け足でまとめてみることにします。
□納まり検討をする理由
まずはそもそもの話として「なぜ建物の細かい部分の納まり検討をするのか」というあたりのについて考えてみました。
どんな仕事でも同じなのだとは思いますが、細かい部分の納まりや色々な取り合いを検討・調整していく作業はかなり労力を必要とします。
その大変なボリュームのある業務を「仕事だからやるのは当然」という理由でやり抜く事もおそらくは出来ると思います。
しかし大変な業務を最後までしっかりとやり遂げる為には、なぜそうした業務が必要になるのかを知っておく方が良い、というのは間違いありません。
設計者がイメージしている「このような建物を造りたい」という思いは、設計図にある色々な図面で表現されることになります。
しかし設計図も万能ではなく、設計段階ではメーカーまで決まっていない事もあって、細かい部分までは検討や調整が出来ない場合がほとんど。
そうした設計図の情報と、施工者が選定したメーカーの情報を踏まえて、本当に具体的な納まりの検討をする、という作業が納まりの検討です。
そうした検討はかなりの労力が必要になりますが、それをやらないまま施工を開始すると、細かい部分の検討が足りずに思わぬ事態が頻発することに。
そうなると施工のやり直しなどが大量発生してしまいます。
一度造ったものを壊してもう一度造るというのは、結局同じようなものを2回造っている訳ですから、ほぼ間違いなく無駄な作業だと言えるでしょう。
しかも壊す手間までもれなく付いてくる。
こうした無駄を繰り返していると、予定通りに施工が進まずに工事の工程が圧迫されてくる事と、余計なコストがどんどんかかってしまうという問題があります。
当たり前の話ですが、施工者としてそうした状況になるのは出来るだけ避けたいもの。
なので、まずは実際に施工をする前に図面上で検討を進めて、図面上で問題がない事を確認してから施工を進める、というのが理想的な流れになります。
これは施工者にとっても設計者にとっても重要な業務になります。
検討された納まりを設計者が確認して、設計図の意図ときちんと合っているかを確認して、それから施工を開始するという流れが一般的です。
もちろん図面上で問題ない事が確認出来ても、実際の施工がそのままスムーズに進む訳では残念ながらありません。
図面での検討不足や施工精度の問題などがあるので、図面上でしっかり検討をしたとしても、それなりに施工のやり直しなどが出てしまうのが現実です。
しかし、図面上で調整してもなお上手くいかない部分があるという事はつまり、図面上で調整をしないまま施工を開始したら収拾が付かない状態になることを意味しています。
それでは良い建物を造ることは出来ないので、まずは図面というツールを使って色々な部分の納まりを検討していく、というのが設計者と施工者の仕事になります。