納まりを検討する際には、実際の施工がどのように進むかをある程度までおは知っておく必要があって、それによって施工誤差を考慮に入れた納まりの検討が出来ます。
それが出来ないと「図面ではこう描いてあるけど実際には出来ない」という話になってくるので、結局は納まり検討図の意味があまりなくなってしまいます。
そんな話を前回取り上げてみました。
完全に図面の通りに施工が出来る訳ではない、という表現よりもむしろ、図面通りに出来ない場合の方が多い、という表現の方が正解に近いかも知れません。
このあたりのニュアンスは、納まりを検討する業務をする側としても、出来るだけしっかりと把握しておきたいところ。
それが出来ればその分だけ、納まりを検討した図面がそのまま実際の施工でもその通りになりやすい、という状況になっていきます。
図面というのは、建物を建てるよりも前に色々な関係をCADの空間上で仮想的に造ってみて、その中で問題点を出して解決していくという役割を持っています。
その図面が実際とは違う状態では少し困るので、出来るだけ図面と実際とがイコールになるようなやり方で進めていくことが大事なんです。
その為には、検討する為の図面を作図する側が、実際の建物がどのように造られるかをしっかりと知っておく必要がある、という事ですね。
そうして検討している図面上の話と実際の施工との違いをすり合わせていく為には「クリアランス」という考え方が非常に重要になってきます。
クリアランスというのは「隙間」とか「ゆとり」という意味を持っていて、ここでは材料と材料との間にある程度の隙間を設けるという意味で使われます。
ある程度施工をする際に図面通りにいかない部分があったとしても、それが原因で納まらない状態にならないように余裕を見ておく、という感じです。
ただ、いくら実際の施工が図面通りに進まないとは言っても、それを全部納まり検討時にクリアランスとして見ておく事が出来る訳でもありません。
実際の施工では施工誤差があるという現実は仕方がないとしても、どこまでの誤差を許容すれば良いのか、という話がある訳です。
前回例に挙げた断熱材の厚みで言うと、20mmの吹付厚に対して30mm程度のクリアランスを取っておくのは正解ではあると思います。
しかし…だからと言って、クリアランスを50mm確保するのはちょっとやり過ぎになってくるので、適切な寸法設定が重要になってきます。
20mmの吹付厚が30mmになるのは許容範囲だと思いますが、それが50mmとかになるとさすがに厚すぎで、そこまでいくと施工誤差の範囲を超えてしまいます。
そこまでの施工誤差を見込んでおくと、建物内部の壁位置など影響が出てしまうので、クリアランスが大きすぎるのはちょっと問題なんです。
納まりを検討する際には、現実として図面通りにはならない事を考慮して、ある程度の施工誤差を見込んでおく事がポイントです。
ではありますが、施工誤差というからにはあくまでも「誤差」である必要があって、狙った寸法に対して倍以上の関係になるようでは誤差とは言わない、という事です。
そのあたりのバランスは納まりを検討している段階で見極めておく必要があります。
最低限のクリアランスしかない場合には、あまりにも施工が大変になりすぎてしまい、クリアランスを大きく見ておくと室内のプランに影響が出てしまいます。
そのどちらも結局納まりとしてはNGという事になるので、ある程度のバランスを見ながらクリアランスを設定しておく事になります。
こうしたクリアランス設定のバランス感覚は、やはり実際に現場での施工を知っているかどうかが大きなポイントになってくるはずです。
納まりを検討する役割の方であれば、そのあたりをきちんと考慮した上で納まりを決めていく必要がある、という話でした。