コンクリート打放し仕上の壁に対して巾木をどう考えるか、という話を前回から取り上げてきましたが、少し話が長くなってしまいました。
意匠的に見せる壁の場合は床仕上材によって微妙に変わってくる事になり、床仕上材が石の場合の納まりについて前回は紹介しましたが、今回はその続きから。
床仕上材がタイルの場合にどのような納まりとなるか、という話から今回は検討を始めてみることにしましょう。
床仕上材がタイルの場合でも、基本的には床仕上材が石の場合とほぼ変わらない納まりになり、床タイルとコンクリート壁との取合いはシール納まりになります。
無理に巾木を設けて納めるよりも、化粧で見せるコンクリートの壁をそのまま下ろしていった方が美しく仕上がるはずです。
上図は床仕上材をタイルとし、巾木もタイルにするという考え方ですが…
このような考え方も成り立ちはしますが、見た目を考えた時にあまり良くない状態になるので、こちらも石巾木と同様あまりお勧めは出来ません。
これはあえて例に出してみたものの、私は一度もこうした納まりの経験がありません。
これはちょっと使いどころが難しいですよね。
次に床仕上材がフローリングの場合。
床仕上材がフローリングの場合、木の伸縮を吸収するための緩衝材が必要なので、その分だけ壁と床仕上材との取合い部分をあけておく必要があります。
壁仕上材が何らかの材料を貼っていくタイプであれば、床勝ち納まりにして緩衝材を隠すことが可能になるのですが、この場合は床勝ち納まりが難しいです。
そうすると自動的に上図のような納まりとなりますが、フローリングの切り口がそれほど綺麗に見える訳ではないので、納まりとしては苦しいものがあります。
そこに緩衝材として黒っぽいゴムが入る事になるので、ちょっと見た目としては洗練された感じにはなりにくい関係と言えるかも知れません。
このような現状を踏まえて検討をしていくと、上図のような感じで無理矢理床勝ち納まりにしたくなってくるのですが…
この納まりは欠き込みの下端ラインが綺麗に通るかどうかなど、施工精度を考えるとかなり苦しい納まりになっています。
図面だけを見ると良い感じなんですけどね…
壁がコンクリート打放し仕上で、床仕上材がビニル床タイルの場合も考えられますが、この場合は巾木ありにするかどうかで少し悩んでしまいます。
納まりとしては巾木なしでも問題はないのですが、ビニル床タイルがコンクリート壁にぶつかる部分をどう納めるかが難しいところ。
理想的には上図のような関係になるのが正解だと思うのですが、これを実現する為にはビニル床タイルの端部を綺麗にカットしていく必要があります。
図面ではそれが簡単に表現できるのですが、現実は少しずれたりする事も。
そうなるとコンクリート壁との隙間が斜めに見えたりする可能性もあって、その結果綺麗に納まらない可能性も結構あります。
そのあたりを考えると、上図のようにソフト巾木を取り付けることも選択肢としてはありますが、これも納まりとしてはあまり綺麗ではないんですよね。
どちらかというと、巾木なし納まりの方が良いとは思いますが、そのあたりの判断は意匠設計者と施工者とで調整が必要になるかも知れません。
コンクリート打放し仕上壁で巾木をどのように納めるのか、という話はこのあたりで終わりにしておくことにしますが、色々な納まりパターンがあったかと思います。
中には納まりが微妙な感じになってしまう場合もあるので、まずは壁をどう見せたいのかを事前にきちんと考えておくことが重要になってきます。
それが曖昧な感じになっていると、結果として納まった、というような感じで納まってくことになるので、それが意匠設計者の狙い通りかどうかは分からない状態に。
それでは建物の見た目として良いはずはないので、まずはどのように見せたいかの方針があって、その為にどのような納まりになるか、という順番で検討を進めていくことをお勧めします。