建築だけの問題で考えると、天井仕上材の納まりは割とシンプルなものになるけれど、設備も含めた納まり検討はかなり複雑になる場合もある。
前回はそのような話を取り上げましたが、設備関連についての話は実際に天井の検討をしてみると実感してくるはずです。
こうした設備取り合いの検討を進めるにあたっては、天井裏のスペースがどの程度あるのかを確認することが非常に重要になってきます。
と言うことで、今回はまず建物の階高の考え方について取り上げてみたいと思います。
階高というのは、例えば2階の床レベルと3階の床レベルがあったときに、その床レベルの間隔がどの程度あるのか、という数値を指します。
建物の断面図を簡単に表現してみると下図のような関係になるのですが、その中で3400と書かれた部分が階高という事になります。
この断面図で既に階高と天井高と天井裏スペースの関係が分かってしまうと思いますが、図面だけではちょっと寂しいので説明もしていきます。
階高に対して天井高がどの程度あるのかによって「階高-天井高=天井裏スペース」という関係がまずはあります。
そして、天井裏スペースには建物の構造体である梁が隠れてくる事になり、梁がある部分以外のスペースを設備で利用することが出来る、という感じになります。
天井高さと設備スペースの関係はこれで何となくイメージ出来るのではないかと思います。
特に最近の建物はコストや効率などを考えて、階高をなるべく少なくするような方向で設計をしている傾向にあるので、天井内のスペースがどうしても狭くなりがちなんです。
これはある程度仕方がないことではありますが、こうした調整は手間がかかるので、建築としては天井はそれほど難しくないにも関わらず、天井の検討は大変だと感じるのでしょう。
建築だけの天井納まりで非常によくある問題点としては、上階の梁下端レベルと天井高さが干渉しているという話があります。
具体的な数値を挙げてみると、階高が3400のフロアで天井高さを2600に設定したい場合で、上階の床が下がっていて梁下端が2900レベルになっているなどの場合です。
上図のような関係になっていると、当たり前の話ではありますが、天井高を2600で通すことは出来ませんので、何らかの対応が必要になってきます。
ただ、対応とは言っても梁は建物の構造体ですから、天井仕上にとって邪魔になるから梁をなくすとか小さくするとかは、ちょっと当たり前ですが出来ないんですよね。
建物の優先順位としては、まずは構造体があって建物の骨組みが構成されて、それを隠す為に仕上をしていくという考え方になるので、構造体が優先になるんです。
そうすると調整をしていく必要があるのは天井ということになる訳で、天井を調整するという事はつまり、結局天井の高さを下げるという方向になるしか手がない状況になります。
設計者としては、天井の高さというのは部屋の雰囲気を左右する結構重要な要素なので、それを下げる検討というのは全然おもしろくない作業な訳です。
もう少しはっきり書いてしまうと、上階の梁に干渉するから天井高を下げないと納まらないとかの話などしたくない、というのが本音。
上階の梁に干渉しないように、という目的で階高を大きくすれば、単純に天井の納まりとしては解決ということになります。
…が、コスト的な部分を考えると天井の為だけに階高を大きくすることは出来ないので、おそらくほとんどの建物でこうした話が出てくることになると思います。
あまりやりたくない天井高の調整ではありますが、設備を含めて出来るだけ早く調整をしておくことが設計者側としても施工者側としても重要になってきます。
施工がかなり進んだ後で天井高を下げたりすると、色々な部分に影響が出てくることになって、結局は意匠的にもおかしいことになってしまいますから。