建物の壁として主に採用される仕上材の種類についての話を前回は取り上げてみました。
選択出来る壁仕上材の種類は結構たくさんあって、ある程度グレードによって分類されるので、場所によって使い分けていくことになると思います。
もちろん壁仕上材のグレードには差がありますが、それぞれの部屋によって適切な壁仕上というのがグレード以前の話としてあります。
例えば事務室など、毎日そこにいて業務をするような部屋であれば、壁は白系の塗装やビニルクロスなどが適しているでしょう。
それを壁仕上材の単価として高くてグレード感があるからという理由で、ピンク系の石を張ったとしても、おそらくその部屋を利用する人は喜びません。
逆のパターンも当然あって、エントランスなどでちょっと豪華な雰囲気が欲しい部分では、シンプルなビニルクロスを採用するのは寂しいものがあります。
当たり前の話ではありますが、適材適所という考え方をベースにして壁仕上材を選定していく事が設計者には求められます。
床仕上材や天井仕上材などの選定と合わせて、トータルでその部屋について考えていくことによって、それぞれの部屋の見た目が調和していくことになる、という感じですね。
壁仕上材によって納まりは違ってくることになるので、それぞれの壁仕上材毎に具体的な例を出しながら細かく説明をしていこうと思っています。
まずは壁仕上材としてちょっとグレードが高い「石」について色々と考えてみることにしましょう。
今まで壁下地について色々説明してきた際にも、納まりの説明をする都合の中で石の納まりが時々登場してきたと思います。
また、床仕上材としても石が登場してくる関係で、石の表面をどのように処理するかによって見え方がどれだけ違うのか、という内容の話は既に書いています。
石の表面仕上げなどについての話は上記リンクで読んで頂くことにして、ここでは本当に石の具体的な納まりについての話を進めていこうと思います。
床仕上材として石を採用する場合には、人が頻繁に通行しても割れたりしないような厚みを確保する、という考え方で石のサイズが決められました。
具体的な数字で言えば、大体25mmくらいの厚みが必要で、その下にバサモルタルを敷いていく納まりが基本になっていたかと思います。
壁仕上材として石を採用する場合の納まりがどうなっているかというと、やはり石は重量がある仕上材ですから接着貼りがなかなか厳しいという話がまずはあります。
接着貼りが出来るのであれば、コンクリートやECPの下地に接着剤で貼っていく事になるので、納まりとしてはかなりシンプルになるのですが…
上記のような接着貼りの納まりは、石ではなくタイルなどでは一般的なのですが、石で同じことをするのはなかなか難しいという現実があります。
壁仕上材として石を張っていくには「引き金物」と呼ばれる金属部品がまずは必要になります。
石の上下にダボ穴をあけておき、そこに金物を取り付けて壁下地に固定していく、という納まりが一般的になっています。
下図はちょっと昔の納まりで、コンクリートの壁に対して鉄筋を流して固定していき、そこから引き金物で石を固定するという納まり。
最近というか結構前からですが、コンクリートや鉄骨などの壁下地に対してアングルを通しで固定しておいて、そのアングルに対してさらにダボピンが付いたプレートを固定していくという納まりの方が一般的です。
石の小口面(厚み方向の面)にダボを入れる穴を掘る必要があるので、あまりにも石が薄い場合は穴の部分で石が割れてしまいます。
なので結局壁の石を薄くするわけにはいかず、25mm程度の厚みが必要になって、出来れば30mmは欲しいという納まりになっています。
石の厚みと金物のスペースなどを考えると、100mm~120mm程度の仕上代が石には必要になってくるということが図面を見ると分かります。
これは仕上代としてはかなり大きな寸法になるので、出来れば少しでも小さくしたいところなのですが、必要な寸法なので仕方がありません。