さて、タイルが持っている特徴や種類などの話は前回までで終わりにして、今回からはタイルの具体的な納まりについて考えていくことにしましょう。
まずは最も考えておかなければならない問題、床コンクリートのレベルについて。
石の納まりの場合と同じくタイルは厚みのある床仕上材ですから、床仕上天端レベルをFL±0に設定したい場合には床コンクリートを下げておく必要があります。
床仕上天端レベルをFL±0に設定するというのは、当たり前の話ですが、他の床と同じレベルに設定するということを意味しています。
床仕上材をタイルにする部屋だけ少し床が上がっている、というような事はあり得ませんので、通常は床天端が揃うようにコンクリートを下げる必要があるはずです。
だからまずはタイルを貼る範囲を確定させておき、その上で床コンクリートを下げておく必要がある範囲をそれとセットで確定させる。
…と、ちょっと理屈っぽい説明に仕上がっていますが、床タイル仕上で検討を進めていく流れはこんな感じになります。
こうした検討に必要なのが「タイルを貼る為に床コンクリートをどの程度下げておく必要があるのか」という部分になってきますが、断面図はこのような感じになります。
床で採用されるタイルの厚みは大きさによって微妙に違ってきますが、大抵の商品は厚くても15mm程度で10mm程度の商品も結構あります。
施工精度の事をあまり考えなくても良いのであれば、タイルの厚さ+2mm~3mm程度で床タイルを施工することは可能です。
15mm厚のタイルであれば18mm下げておけば良いですし、10mmのタイルであれば13mm下げておけば良いということになる訳です。
しかしここで問題点が二つほどあります。
ひとつは床コンクリートのレベルを決める時点では間違いなくタイルの品番は決まっていないという点で、もうひとつがタイル厚から3mm下がりで精度良く施工など出来ないという点。
これらの現実を考えてみると、床タイルが決まっていない状況でタイル厚から3mm下がりのレベルで床コンクリートレベルを決めるのが危険だということが分かってくるはず。
仕上が決まっていない状況で下地を決めなければならない、という状況は残念ながら結構な割合であるものです。
そうした状況で施工者が考えるのは、仕上が決まったときに「納まりませんでした」となる事だけは避けたいという事。
なので、未決定項目がたくさんあるような状況であれば、後で調整が出来るように少し大きめに床コンクリートを下げておくという考え方をする場合が多いです。
今回の例で言えば、まずは床コンクリートの天端レベルをFL-30で決めておく、というような考え方を施工者はするはずです。
少しだけ大きめに寸法をとっておくことによって、後で決まったタイルがどれだけ厚いものになってもほぼ間違いなく納まります。
その為に床コンクリートレベルを余分に下げておく数値が10mm程度であれば、余分に下げておくことで多少のコスト増にはなりますけど問題はありません。
それよりも、ぎりぎりの数字を狙って施工をしてしまった後で、どうにもならない状況に悩む方がよっぽど効率が悪いので、そうした状況を避けるような納まりを施工者は考えます。
と言うことで、工期的な話と施工精度を考えた際に、どちらも逃げがきく床タイルの納まりはこんな感じになります。
床コンクリートを打設した際の精度も完全に平らとは言えないですし、そもそもタイルの厚み自体が決まっていない状態。
タイルの品番が決まるまで床コンクリートのレベルを決めない、というようなことが出来れば問題はないのですが、もちろんそんなことはあり得ません。
そうなると上図のように逃げておいて後からモルタルで調整する、というやり方が一番バランスが良いのではないかという事になる訳です。
建物の床コンクリートレベルを決めていく段階というのは非常に忙しい状況ですから、後回しに出来ることは積極的に後回しにした方が良い結果につながる事が多いと思います。
もちろん理想的な話をすれば、タイルの品番とか厚みなどが決まらないと床コンクリートのレベルが決められない、という事になるのですが。
理想がどのような状態かをを知りつつも、現実がそれとは剥離していることも知っている訳で、そのあたりはバランスを取りながら仕事として回していくしかないですよね。