床タイルの納まりを検討する際には、まず床コンクリートとの関係をどのように考えるかが重要になってくる、という話を前回から考えてきました。
タイルの品番決定のタイミングなどを踏まえて、あまり理想的な納まりとは言えませんが、ある程度逃げがきいた床タイルの納まりに決めていく、という話でした。
タイルの品番などが決まっていない状況の中で、後々品番が決まった際に困らないよう上手いこと対処をしておく、という考え方になる訳ですが…
施工者の検討する納まりは基本このような考え方で進められていくことになります。
最終的に見た際に「これが正解だった」という感じになる納まりは確かにありますが、そうした正解を事前に選定出来る訳ではない、という事ですね。
床タイルの納まりについての話はこのあたりで終わりにしようかと思いますが、最後にひとつだけ考えておきたいのが「水勾配」です。
外部の床というのは基本的に雨が降る関係で水に濡れることになり、その水を流す為の排水溝と排水溝まで水を流す為の傾きが必要で、その傾きを「水勾配」と呼びます。
床タイルというのは外部でも採用される仕上材になりますから、そうした場合には排水溝を設けることと、床に水勾配をつけておく必要があるんです。
納まりを検討する際にこの水勾配は結構やっかいな存在になり、施工をする際も面倒なのですが、水勾配を取らないと床の上には絶対水がたまります。
例えば大型ショッピングセンターに車で買い物に来た際に、駐車場に車を止めて建物に入るまでの間が巨大な水たまりになっていたら…
もちろん大きく迂回するしかない訳ですけど、毎回雨の日にそうなっている事が分かっていれば、恐らくショッピングセンターを利用しなくなると思います。
でも実際にはほぼそうした状況はないはずで、そこは設計者と施工者がきちんと水勾配を検討しているからという理由があるんです。
ちょっと面倒ではありますが、外部であれば水勾配の検討は必須ということです。
床に水勾配を取る場合の考え方はいくつかあります。
A : 排水溝まで一定の勾配で床を同じ傾きにするという考え方。
B : 排水枡に向かって床全体をすり鉢状に傾ける考え方。
AとBを平面図で表現してみるとこのような関係になります。
意匠的にどちらが良いかはかなり微妙なところですが、少なくとも外部であれば床に勾配を付けないという選択肢はありません。
床が平らであっても水が流れる溝があれば自然とそこに水は集まります、と言いたいところですが、実際は流れずひたすらたまってしまうことになります。
施工精度もありますから、勾配が緩い場合でも水は流れずにたまってしまうことになり、ある程度きちんと水が流れるような勾配を計画しておく必要があります。
こうした水勾配は施工段階の最初から検討しておかないと、後でもう少し勾配が欲しいという状況になった時に、もうどうにもならない事になってしまうという問題が。
そうならない為にも事前の水勾配が必要になってくる訳ですけど、床がタイルになっている場合には少し注意が必要です。
例えば上図のB納まりのように、排水枡まで床全体をすり鉢状に傾けようとした場合、直交する勾配が交わる部分でこうして稜線が出来るはず。
ですが、床のタイルはその大きさがあらかじめ決まっている訳ですから、そんなに都合の良い位置に稜線を入れることは難しいんです。
タイルという床仕上材は硬くてある程度の大きさがあるものですから、それを微妙にねじっていくことは、図面では表現出来ますがあまり現実的ではありません。
その場合はもうタイルを斜めに切って貼っていくしかないのですが、これはさすがに見た目が残念になりすぎるので、出来れば避けたいところです。
そうなると水勾配としては全て一定の傾きにするのが良いという事になるのですが、そうなると排水溝が通しで必要になってきて…
という感じで、床タイルを施工する部分では水勾配がセットになっている場合もあるので、そのあたりを総合的に検討していく必要があります。
場所によってそれぞれ床天端レベルが変わってくる訳ですから、水勾配の検討は結構面倒なものなのですが、水がたまることが分かった後で検討するのはもっと面倒です。
面倒な事や出来れば避けたい報告などは早く済ませる事が仕事の鉄則なので、水勾配の検討も極力早い段階で終わらせておきたい項目だと私は思っています。