前回の説明では、SRC梁に孔をあけることが出来ない場所があるという話と、SRC梁の主筋が直交する鉄骨梁に干渉する場合の考え方についての話を取り上げました。
鉄骨と鉄筋の納まりというのはこうして非常に細かい部分まで進めていく必要がありますが、場合によってはそれが許されない状況もある、という話もありました。
仕事ですからあまり理想的な流れになることはあまり多くはなくて、理想と現実とのバランスをとりながら仕事を進めていく感覚が重要になってきます。
こうした「スケジュールをみながらどこまで検討を進めるかを判断する」という話は、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の納まり検討に限定された話ではありません。
どのような納まりの検討であっても、適切なタイミングで適切な検討をすることが重要なのは同じであり、それを間違えるといくら検討の内容が正しくても報われない事になります。
そうした感覚で仕事を進めることが出来る人はあまり多くないのですが、しかしだからこそそれが出来る人に価値がある、という事になるかと思います。
さて…
このような明確な答えがない理想的な話をここで煮詰めて考えていっても、恐らく終わりがない話になってしまいますので、こうした話はそろそろ終わりにしておきます。
そもそも私自身がそうした判断を毎回完璧に出来ていない状態で、実際に色々と失敗しと苦労を重ねている訳ですから「こうすれば良いのです」みたいな話などとてもではないですが出来ません。
少なくとも納まりに関する知識については、ある程度の基本パターンとか正解に近い関係などがありますから、まずはその方面で知識を増やしてい方が良いでしょう。
前回も同じようなことを書いた気もしますが、ある程度知識を得たらあとは実践していくなかで経験値を高めていくしかないのが現実ですから。
そうして経験を積んでプロとしてのスキルに磨きをかけていくのは、どうしても時間がかかってしまいますし、それほど簡単な事ではありません。
建築関連の知識を紹介している当サイトとしては残念な事ではありますが、知識を得るだけでは仕事としてはどうしても足りず、実戦経験が必要不可欠なんですよね。
しかし、だからこそ経験を積んだプロには相応の価値があるのだと私は思います。
そして、そうした建築のプロになるためには、やはり経験と同時に知識も必要になってくる訳ですから、知識を得ることは必須条件になるはず。
知識を得るという目的であれば、当サイトでも少しや役に立てますから、必要な部分をピックアップして読んで頂ければと思っています。
と、少々前置きが長くなってしまいましたが…鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の納まりについての話に戻ります。
今回取り上げていく内容は、SRC梁の主筋が柱に対してどのような関係になるのか、というあたりの話になります。
SRC梁というのはRC梁の中に鉄骨が入っているというイメージになる訳ですが、鉄筋というか主筋の配置がRC梁と全く同じになるかというと、そうはならない事が多いです。
それはなぜかというと、SRC梁の主筋配置を通常のRC梁と同じにしてしまうと、ほぼ間違いなく柱の鉄骨フランジにぶつかってしまうからです。
上図のように図面で表現すれば、鉄骨柱とSRC梁の主筋との関係性がどのようになっているのかがすぐに分かると思います。
SRC造の一般的な考え方をすると、通り芯=鉄骨梁のウェブ芯=鉄骨柱のウェブ芯になることが多いので、その位置だと柱に入ってすぐにフランジと干渉してしまうんです。
しかしだからと言って、構造設計の立場で物事を考えた時には、鉄骨柱のフランジに孔をあける訳にはいきません。
また、梁の主筋は柱に対して半分以上の部分で定着する事が基本になるので、梁の主筋をフランジの手前で定着させる訳にもいきません。
その場合にどう考えるのか、という話は次回に続きます。