前回は鉄筋の納まりをある程度リアルに検討するという話をしていく中で、鉄筋の曲げをどのように表現するのかという話になりました。
鉄筋の曲げによって主筋の位置が微妙に変わってくるので、ある程度はリアルに作図した方が良いという話で終わってしまったので、今回はその話を続けていきます。
これは実際の鉄筋納まり状況を見てみると何となく分かるのですが…
あまり厳密に図面で表現しても仕方がない気がしてしまうのですが、図面で検討をする以上は鉄筋の曲げについても、定められたルールに合わせて作図をした方が良いはず。
まさか鉄筋を90°のキッチリした折れ線で表現する訳にもいきませんから。
CADを使って鉄筋の納り図を作図するのであれば、いずれにしても数値を入れて鉄筋の曲げを表現する訳ですから、その数値を正確にするだけなので簡単です。
ということで、今回は鉄筋についての話の続きとして、鉄筋の曲げがどのような関係で決められるのか、というあたりの基本ルールを取り上げてみたいと思います。
鉄筋の曲げについての方針は基本的に構造設計者が定めるものですから、構造設計者によって少しずつ違うものになってしまう傾向にあります。
とは言っても、構造図によって全く違う訳ではないですし、それぞれの違いは構造図に記載されているものなので、細かい数値よりは考え方をここでは確認してみることにしましょう。
鉄筋の曲げ径はいくつかの要素によって決まってくる訳ですけど、まずは鉄筋の種類(材質)によって違い、次に鉄筋の径によっても少し違ってきます。
一般的な鉄筋の曲げ径は、鉄筋の呼び径を「d」とした場合、曲げの直径を3dとか4dという感じで指定していく事が多いです。
具体的な例を出すと、例えば鉄筋の種類がSD295AでD13の場合の曲げ径は3d、という構造設計の指定であれば、下図のようなイメージになります。
呼び径ですからdは13になり、曲げの直径は3x13=39ですから上図の関係になる訳です。
こうした数値を見て頂ければ分かりますが、傾向としては鉄筋が太くなっていくほど曲げの径は緩やかになっていく感じですね。
スターラップの鉄筋径はD13くらいが多いですから、SRC梁の鉄筋を記入した断面図を作図すると、このような関係になってきます。
これである程度スターラップの形状が正確に記入出来ますので、それを踏まえて主筋の位置がどこにくるのかを図面で想定することが可能になります。
もちろん図面通りに現場で鉄筋が正確に組めるかどうか、というのは人がやることですから難しい部分もあるのですが…それでも結構信頼のおける目安にはなるはずです。
構造設計が考えている鉄筋納りの基準をベースにして、鉄筋径や曲げなどを正確な図面を作図することによって、ある程度現実の納りに近い関係で検討を進めることが出来ます。
こうした正確な図面で検討をすると、実際と大きく違っている、というような困った状況になることは少なくなるので、検討図面の価値は高まります。
現場では図面通りに施工出来る訳ではない、という意見もありますけど、そもそもの指標となる図面がないと適当になるばかりです。
なので、図面で検討をする際には「実際にはそうはならないかも知れないけれど、このような関係を目指す」という指標を目指していく訳です。
信頼のおける目安というのはそういう意味で、実際の納りを図面に表現して検討をしていくという考え方は、鉄骨だけではなく様々な部分に適用されることになります。
鉄筋の納りというのはもう少し奥が深いものではありますが、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)で鉄骨の孔を検討するにはこの程度の基本知識で充分です。
検討の際には、数値で色々計算をしていくのもアリですが、実際に図面上で表現をしてみる方が結局は楽な場合も多かったりします。
CADで作図をすれば一度作図したデータを転用したりすることも可能になりますから、そのあたりをトータルで考えて効率の良いやり方を選択する、という癖を付けておくと良いかも知れません。