仕上図は設計図における意匠図と同じような役割を担う図面ではありますが、設計図と施工図の大きな違いは、実際に施工する為の図面である事です。
つまり、施工出来るスペースがあるかを検討したり、記載している位置に仕上を固定する為の下地が必要かの検討をしたり、などを盛り込んでいくことが必要です。
そうした検討をしないままでも仕上図は作図することが出来てしまいますが、それを実際の施工で使おうとすると様々なトラブルが出てきて困ることに。
そうしたトラブルが実際の施工で出ないようにする為の図面ですから、細かい検討をしないと仕上図を作図する意味がありません。
事前に問題点を全て出し切る為には、できる限り深く踏み込んで検討を進めていき、仕上図としてきちんとまとめていくことが必要になってきます。
逆に、きちんと検討された仕上図をまとめた上で現場での施工を進めると、図面が要因の問題が比較的少なくなり施工がスムーズに進む事になります。
こうして考えていくと、施工図の役割は結構重要だという事が分かってきます。
とは言っても、図面が合っていても現場で全てその通りに施工される訳ではない、というあたりが非常に難しいところなのですが…
それでも、検討されていない仕上図で施工を進めることに比べると、きちんと検討した図面で施工をする場合には、かかるコストと時間がかなり有利になるはずです。
また、仕上図というのはあくまでも建物がどう見えるかを表現している図面ですが、建物の骨組みを表現する躯体図とも非常に密接な関係にあります。
コンクリートや鉄骨の柱や梁など建物の骨組みというのは、最終仕上ラインからはみ出さない状態になるように計画していく事が一般的です。
なぜかというと、よほど事前に検討しておかない限り、コンクリートや鉄骨の柱というのはそれ程美しい仕上にはなり得ないからです。
コンクリートの柱を意匠的に見せようとした場合、考えられるのはコンクリート化粧打ち放し仕上しかなく、見た目はこんな感じになります。
確かにコンクリート化粧打ち放し仕上は美しいのですが、どうしても硬質なイメージが出来てしまい、実際に触れると冷たくて硬いため、どこにでも使える訳ではありません。
外気に面するコンクリートの室内側は、外気温が出来るだけ室内に伝達されないようにする為、断熱材を吹き付ける事が基本になりますが、コンクリートむき出しの場合はそれも出来ません。
そうなるとさらにコンクリートが冷たくなったり、その結果として常に結露して濡れていたりするなど、建物の性能に大きな影響を与える場合も出てきます。
鉄骨の柱をあえて見せる仕上を計画する場合、仕上は鉄骨柱+耐火塗装くらいしかなく、何色で仕上げるか程度しか選択肢がありません。
見た目はこんな感じですが、それほど美しくない仕上ですし、柱にコンセントやスイッチなどを取り付けることも出来ないので、建物の使い勝手はいまひとつになってしまいます。
もちろん意匠的にそうした見た目を狙うことはありますけど、全部の部分でその納まりを採用すると建物の性能に関わってくるのであまりお勧めは出来ません。
ということで、柱や梁などの構造体はあまり見せず、綺麗に仕上げることが可能な部材で囲ってしまうという考え方が一般的になります。
仕上図は最終的な仕上ラインを検討した図面ですから、検討された仕上ラインから構造体が飛び出して見えてしまわないかの検討も仕上図の役割です。
仕上の位置をきちんと押さえた上で、その仕上ラインから構造体が出てしまわないように検討しながら躯体図を作図していく、というような流れがスムーズではないかと思います。
こうした検討も事前にやっておかないと、後で大きな問題になりますから、仕上図の検討というのは責任重大だということが言えます。