前回は施工図の中でも建物の構造についての情報を記載した「躯体図」について、その種類と基本的な考え方を簡単に紹介しました。
今回はあと少しだけ躯体図についての話を続けてみたいと思います。
建物の構造には「鉄骨造」と「鉄筋コンクリート造」と「鉄骨鉄筋コンクリート造」がある、という話を以前取り上げました。
これらの構造を構成する部材を考えていくと、これはもう読んだままになってしまいますが、鉄骨と鉄筋コンクリートが主な部材になっていることが分かります。
鉄骨というのは工場で製作してくる部材で、施工図ではなくもう少し別の図面を見て工場製作する事になるので、ここで詳しく説明するのはやめておきましょう。
という事はつまり、躯体図が主に使われるのは、もう一つの構造である鉄筋コンクリートを造っていく為に作図されるという話になってきます。
コンクリートというのは柔らかい状態で型に流し込んでおき、時間と共に発生する化学反応による硬化を待った後で型を解体するという手順で造られます。
なので、要するに躯体図ではコンクリートを流し込む型をどのような形状で造れば良いのかを説明する図面という事が言えます。
鉄筋コンクリートですから、コンクリートだけの情報では足りないのですが…
それでも「躯体図は基本的に型枠を造る為の図面」という表現は、半分正解という事が言えるのではないかと思います。
もちろん鉄筋を組み立てる為にも躯体図は利用されます。
コンクリートは圧縮する力に対して非常に強いのですが、引っ張る力に対して脆いという特徴を持っている為、引っ張る力に強い鉄筋とセットにしないと構造体として成立しません。
鉄筋とコンクリートを一緒にする事によって、コンクリートと鉄筋が持っているお互いの欠点を補いあった、様々な力に対して強度を持った構造体が完成する訳です。
コンクリートを流し込む際には鉄筋が必ず配置されている必要がある、という事になるので、躯体図を見れば鉄筋をどこに配置すれば良いのかが分かるようにするのは自然な流れだと言えます。
コンクリートの形状はある程度自由になりますが、その形状はあくまでも構造図に記載されているサイズを満たす事を前提としています。
要するに構造体のサイズを守る事が前提になるという話で、その構造体部分には必ず鉄筋が配置されている事になる訳です。
こうした情報を躯体図に盛り込んでいくことによって、躯体図は施工を進める為の基準となる図面と呼ばれていく事になります。
最終的な仕上のラインも考慮して、まずは構造体としてのサイズを守っていて、なおかつ最終仕上の邪魔にならない形状のコンクリートを造っていく。
これが施工者として理想的な状態になっていて、そうした理想的な形状の構造体を造っていく為に、躯体図と呼ばれる施工図は整理されていく訳です。
鉄筋コンクリートは一度化学反応して硬化してしまうと、後からそれを壊すことが非常に大変になるという特徴を持っています。
後から簡単に壊せるような部材では建物の構造体にはなり得ないので、こうした特徴は当然持っているべきものではありますが…
だからこそ、鉄筋コンクリートによる構造体を一度造った後は、壊すことで調整が必要な状況になってしまわないようにする必要があります。
その為、躯体図を作成する際には、構造図の情報を厳守するだけではなく、意匠図の要望を満たす為に色々な検討が必要になってきます。
こうした細かい調整を進めていくことによって、実際に建物を造る際に手戻りが発生しない状況になっていく、という感じです。
事前にものを造る前に図面で確認しておく。
これが図面の基本的な役割になっている訳ですが、躯体図はそうした役割をキッチリと果たす事が
求められる図面だと言えるでしょう。