設計図を基本方針にしながらも、コストをにらんで様々な提案をしていき、場合によっては施工のプロとして提案をする事によって設計図に記載されている内容を変えていく。
というような話を前回は紹介しました。
こうした提案には当然深い知識と豊富な経験が必要になってきますが、そうした知識と経験を持っているのが施工者であるゼネコンなんです。
工事の請負金額が決まっている以上、出来るだけ適切なコストで施工を進める為にも、施工者として積極的に様々な提案をしていく必要があります。
そうした検討も施工者がやるべき仕事のひとつではありますが、もちろん施工者の役割はそれだけではありません。
施工のプロとして、実際の工事をどのように進めていけば良いのか、というあたりの話を具体的に計画する事も重要な仕事になります。
建物を造っていく際に、具体的にどのような手順で工事を進めるか、という内容までは設計図に記載されている訳ではありません。
そこはやはり工事のプロである施工者が検討をしていくことになる訳です。
ここで具体的な例として、鉄骨工事で検討する内容をざっと挙げてみると…
・鉄骨を建てる為にはどのような順番が良いか
・その場合クレーンをどこに配置すれば効率が良いか
・鉄骨が建ってしまった後で施工できなくなる場所などないか
大雑把な検討事項として、上記のような項目について検討をして、具体的な鉄骨工事の進め方を煮詰めていく事になります。
鉄骨だけで考えてもこのような検討をしておく必要があって、それが様々な工事の種類毎にあるので、仕事量としてはかなりのボリュームになってきます。
こうした計画が上手く機能しないと、例えば上記の場合では、鉄骨が建った後で建物の奥側にクレーンが届かなくて施工が出来ないなどの問題が多発します。
もちろん施工できませんでしたでは済まないですし、やり方はひとつではありませんので、後から考えても色々な方法はあります。
ただ、その解決方法がどのような種類のものであったとしても、当初の計画よりも余分に手間とコストがかかってくることは間違いありません。
鉄骨が建ってしまった後で外壁を施工するのにクレーンが届かない、という場合には、もっと大きなクレーンを使えば届くとか、隣の敷地を借りて反対側から施工するなどの方法があります。
…が、そうした方法は大きなクレーンを借りるためのお金とか、隣の敷地を借りる為の手間やお金が余分にかかってしまうことになります。
ちょっと乱暴な表現をしてしまうと、どんなに当初の計画が悪くても、最終的にはお金をかければ大抵のことは解決する、ということになる訳です。
ただし当たり前の話ですが、後から何でも出来るのであれば工事の検討しなくてもOKかというと、もちろんそんな訳はありません。
そういったやり方はプロとして恥ずかしい事で、順序よく施工が整然と進んでいき、手戻りが一切ない状態を目指すのが施工者の仕事です。
工事の計画を適当に検討した結果として、後で余計なコストをかけて問題を解決していく、みたいな大雑把な事をやっていたら、利益なんて全然出なくなってしまいます。
利益を出すために仕事をしているのに、仕事をすればする程利益が減っていく、というような情けない状態では施工のプロとは言えない、という事です。
そう言った意味で、設計図の内容に沿った建物をどのような計画で造っていくのかを検討することは、施工者として非常に重要な仕事だと言えるでしょう。
工事計画の検討がどこまで緻密に出来るかによって、施工の進み方が全然違ってきますし、工程的にもコスト的にも有利になっていくことは間違いありませんから。