建物を造っていく為の工程的な話もそうですが、それぞれの工事が絡むところの調整をしていくのもゼネコンの役割になる、という話は以前も取り上げました。
そういった意味では、それぞれの工事を発注したら終わりになる訳ではなくて、それからが大変と言ってもおかしくないくらいの仕事量が施工者側にはあります。
建物の施工を一式請け負って、その工事をそれぞれのプロに頼んで「後はよろしくやっておいてね」と言う感じだと非常に楽なのですが…
実際にはそこまで上手い話はなくて、頼んだ工事についていつ頃工事を始めれば良いか、どのように進めれば良いかなど、色々と調整していかなければなりません。
今回は少しそのあたりについて具体的な例とあわせて考えてみましょう。
例えば鉄骨工事について考えてみた場合、建築工事の中でゼネコンから鉄骨工事を発注されて請け負った鉄骨の専門企業があったとします。
前回も紹介しましたが、ゼネコンは自社で鉄骨を製作する工場を持っていないので、こうして鉄骨を専門とする企業に工事を発注する事になる訳です。
鉄骨工事を受注した企業は鉄骨のプロですから、構造図をベースとした鉄骨を工場で製作する為の準備として、鉄骨製作図を作図していく事になります。
ただ、その企業は鉄骨工事に特化した企業になりますから、鉄骨工事以外の項目、例えば鉄筋工事の納まりなどを深く考えることはしません。
これは別に鉄筋工事なんて関係ないと思っている訳ではなく、単純に自分が請け負った鉄骨工事以外のことに口を出すことはしない、というようなニュアンスになるかと思います。
鉄骨工事以外の工事についての検討については、そうした契約を専門工事企業とゼネコンの間で交わしていない、という表現をした方が良いかも知れません。
しかし実際に建物を建てていく中では、鉄骨工事を進めていく中で、鉄筋のことを考える必要が出てくる場合が結構あります。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の納まりについては後で詳しく説明をしますが、鉄筋の納まりによって鉄骨の加工に影響が出るので、鉄筋の納まりを検討しておく必要がある訳です。
そうした場合には、鉄骨工事の専門企業が鉄筋について検討を進めていき、その検討結果を鉄骨に反映する訳ではありません。
納まりの検討は工事全体を請け負っているゼネコンが進めていき、鉄骨の穴位置などをゼネコン側から指示していくという事になります。
その指示に従って鉄骨を製作していく事になるのは間違いありませんが、あくまでも穴の位置を指示するのは鉄骨業者ではなくてゼネコンになります。
工事全体を調整する役割をゼネコンが負っているというのは、そうした内容を考えてみてもよく分かるのではないかと思います。
これはあくまでも一例ですが、こうした状況があらゆる工事項目で発生してくることになって、それらすべての調整をゼネコンが責任をもってまとめていく必要があるんです。
言うまでもなく、こうした検討や調整業務は非常に大変な作業です。
検討には単純に時間と労力をかければ出来る訳ではありません。
色々な検討や調整を上手く進めるには、高度な知識と経験が必要になってくるので、やはり高い技術をもったゼネコンの役目ということになります。
ゼネコンが色々な企業に工事を発注して楽をしている訳ではない、という事実はこのあたりを考えてみると分かってくるのではないかと思います。
そうした検討や調整を進める為には、考え方の基準になるものが必要で、その為の図面がどうしても必要になってきます。
建物の指針になる図面は当然設計図ということになりますけど、設計図だけではどうしても情報が不足してしまう為、細かい部分の検討や調整をするには不向きなんです。
なので、施工段階での検討や調整をする事と、施工者として現場で工事を進める為に、設計図をベースにしつつもう少し細かい図面を作図していく必要があります。
そうした目的で施工者が作図する図面を「施工図」と呼び、施工図を作図して検討を進め、設計者との調整もしていくこともゼネコンの重要な仕事になります。
施工図についてはもう少し後で詳しく説明していきますが、まずここでは施工段階でゼネコンがどのような役割を果たしていくのか、というあたりについて書いてみました。