前回はゼネコンとサブコンの関係や下請けなどの仕組みについて簡単に紹介しました。
そこからさらに工事を細分化して下請けに工事を発注するという、二次下請けというような状況もあるので、そのあたりについても少しだけ話が出が訳ですが…
なぜ二次下請けというような組織が必要になるのか。
ちょっと「下請け」というとイメージが良くないと感じる方もいらっしゃるとは思いますが、今回はそのあたりについて考えてみる事にします。
前回も例に出しましたが、鉄筋工事を専門にしている企業があったとして、その企業が腕の良い職人さんを10人程度抱えているとします。
そうした地元密着の鉄筋業者さんが、ゼネコンから直接鉄筋工事一式を請け負えるかというと、場合にもよりますが実際はなかなか難しい部分も多いはずです。
工事の規模にもよりますが、例えば最盛期に職人さんを一日50人入れて欲しいというゼネコンの要望があったとしたら、間違いなくその企業はゼネコンの要望に応えることが出来ません。
いくら腕の良い職人さんを抱えていたとしても、一人で5人分の作業をこなすことは出来ませんから、マンパワー的にゼネコンが求める作業速度には応えられないんです。
かと言って、それに応える為に常時50人の職人さんを抱えるというのも、仕事がないときのリスクが大きすぎて難しいといういのが正直なところ。
…であれば、一次下請けの企業から「10人であれば職人さんを出すことが出来ます」という話で契約するのが良い、ということになっていく訳です。
職人さんをたくさん抱えながら仕事がない、というリスクを負わない代わりに、ある程度金額的には少なくなってしまいますが二次下請け企業となる。
というような感じで、この契約形態は協力業者側にもメリットがあるものなんです。
そうした事情があることを考えずに「一次下請け業者は利益だけを抜いてから二次下請けに仕事を流している」と非難するのはちょっと乱暴過ぎるかも知れません。
一次下請けの企業も色々なリスクを負っている訳ですから。
もちろんこれが完璧な組織の形態ではないとは思いますが、誰もが納得する仕組みというのは世の中には存在しないものです。
ある程度リスクを負っている側が多めに利益を得る事が出来る、という意味では今の形態もそれほど悪くはないのではないか、と私は思っています。
これはサラリーマンと独立して個人事業主となった人の関係にも似ていいます。
サラリーマンは仕事が切れた時のリスクを負うことはありませんが、独立した人は仕事が切れた時に収入が切れるリスクを負っていますし、税金など色々と雑多な手続きも会社ではなく自分でやることになります。
そうしたリスクを負う分だけ個人事業主の収入は多めになっているはずですが、仕事がある時だけを見てそれを羨むのはちょっと違うということです。
仕事がない状況であれば、会社に雇われていてあまり仕事がなく暇な状態でも給料が保証されているサラリーマンの方が良い、ということになりますよね。
状況によってどちらが良いかは変わってくる訳で、一次下請け企業と二次下請け企業についてもこれと同じようなことが言えるのだと思います。
一次下請けとしてゼネコンから直接仕事を請け負うことが出来る状態にすることは、企業の規模を大きくしていけば可能ではあります。
しかしそうして企業を大きくしていった時には、仕事がない時のリスクはかなり大きなものになってくるので、その精神的なプレッシャーは半端ではありません。
また、実際に仕事がない状態で人件費がかさんでしまった際の損失も大きくなってしまいます。
損失の金額が大きくなるからこそ強いプレッシャーが生まれる訳ですから、結局は両方セットになっていて同じ事を言っていることになるのですが…
二次下請け企業であれば、そうしたプレッシャーやリスクがある程度少ない状態で済みますから、そちらを選ぶ企業があるのも当然と言えば当然、ということになる訳です。
企業がとるリスクと利益は比例する訳ではありませんが、それでも利益を増やそうとして大きな仕事を受注する為に人を増やしていくことによって、どうしてもリスクは増えていくものです。
企業としてリスクと収益などのバランスを考えて、二次下請け企業のままでいるというのも堅実な選択ですから、そうした判断をする企業がたくさんあるのは自然なことだと思います。
「協力業者のさらに下請けというのは、上前をはねている感じがするからダメ」と考えてしまう際には、そうした状況を踏まえて考えることが必要になります。