先ほども書きましたが、施工段階でも施主との調整は進めていく事になりますから、設計変更が出るのはある程度当然の事だと考えるしかありません。
ただ、ある程度の変更はもう仕方がない事なのですが、問題は変更の時期とその内容で、それによっては工事金額が増になったり減になったり、施工の工程に大きな影響が出たりします。
そうしたコストの増減を追いかけながら、それでも基本的には当初の竣工予定日を遵守して施工を進めていく事が施工者の重要な仕事になる訳です。
人件費や契約などを考えると、最初に契約した竣工日を遵守する事は結局コストを守ることにつながり、結局施工者は最後までコストをにらみながら仕事をしていくことになります。
設計変更の内容や時期によっては、「それは追加見積もりをして金額が増になります」とか「その変更をかけるなら竣工日を変更したい」と言うしかない場合も。
もしくは「この変更をかける場合は増額になりますから、別の場所で減額を提案させてください」という場合もあったりします
このようなコストの考え方と工期のコントロールという部分を、施工者として常に把握しながら施工を進めていく必要があります。
施工段階で設計者が変更をかける場合、意匠的な部分での変更というのは大抵の場合、金額としては増額になることが多いです。
もちろん全てがそうだとは言えませんが…なかなかコストを減らしていくような変更というのは少ないものです。
とは言ってもその増額をそのまま全て施主に請求出来る訳ではなく、正当な理由があるものしか増額は認められないことが多く、施工者としても変更をただ受け入れるだけという訳にはいきません。
増額になる方向での変更があるのであれば、減額となるような変更も検討していかないと、最終的なコストは増えるばかりになってしまいます。
その増額を被ることになるのは施工者ですから、施工者としては設計図に書かれている最終形の通りにただ施工をすれば良いという考えを捨てる必要があるんです。
設計図に書かれている内容で施工を進めない、というのは少々乱暴な表現ですが、設計図とは正反対の内容で施工を進める訳ではありません。
あくまでも設計図を基本方針としつつも、全体を見ながらオーバースペックと思われる部分を適切な状態に変えていく、という感じです。
ちょっと極端な例になってしまいますが…
例えば設計図で、スタッフが利用する休憩室の床仕上がタイル貼になっていたとしたら、「スタッフが利用する部屋であれば塩ビ系の床仕上材で良いのではないですか?」と提案するとか。
まあそんな極端な話はそうそうありませんが、そうした適切な提案を施工者から設計者にしていくことも、施工者の非常に重要な仕事だと言えるでしょう。
逆に金額的には増額になってしまいそうな事であっても、後々で問題になりそうな部分はあらかじめ提案していくことも、施工者の大事な仕事です。
例えばお客さんが利用する範囲の一部で、あまりグレードが高くない仕上材が記載されていたとしたら、「この仕上材で問題ないでしょうか」と確認するとかですね。
そうした提案をしていく為には、設計図がベースになるという前提条件を受け入れつつ、それを少しでも施工者側に有利な条件に変えていく、というスタンスが必要です。
それには「設計図はあくまでも当初の基本方針であり、施工中に色々変えていくことが出来る」という認識をもっておくことが必要です。
そうした認識がないと、設計図に対して何も提案などは出来ませんよね。
それでは施工者としては困るので、あくまでも設計図の内容を尊重しながらも、施工者としての知識で色々提案をしていく、という意識を持っておく事が重要になってきます。