意匠設計者がどのような建物を目指して設計業務や施工に入ってからの監理を進めていくのか、というあたりについて前回は考えてみました。
建物として求められる性能を満たしつつ、見た目にも最大限の配慮をしていく、というような感じになるのではないかと思います。
もちろんそのあたりのバランス感覚は設計者によって違ってくる訳ですが…
それでも全体的な仕事の方針としては、建物の意匠的な部分を常に意識していくという事に違いはありません。
ただ、意匠設計者は建物に見た目だけをひたすら考えていればＯＫという訳ではなく、もっと全体的な部分を見ていく必要もあるんです。
構造設計や各種設備設計であれば、それぞれを専門にしている設計者がいる訳ですけど、それらの設計をトータルで取りまとめる役割は、やはり意匠設計者である場合がほとんどでしょう。
それと同じような意味合いの話になってきますが、建物を建てるプロジェクトのリーダーは大抵の場合意匠設計者ということになっています。
もちろん他の設計者にも同じ事が言えますが、意匠設計者は建物全体を見るため、他の設計者以上に様々な分野を知っている必要があります。
それに加えて、施工者にきちんと意匠的な方針を伝えられるスキルも必要になってきます。
意匠設計者に求められるスキルは結構たくさんあるものなんです。
施工者が建物の納まりを検討する際に、施工者としては設計者から「この部分の見た目はこうしておきたい」という指針が明確に示して欲しいと思うもの。
建物の見た目をどのようにしたいのか、という明確な意思がないと、どのような考え方で検討をすれば良いのかが分かりませんから。
それが分からない状態だと、どうしても標準的な納りで検討を進める事に。
標準的な納りというのは施工性が良くて、なおかつ性能についてもある程度確保されていて、コスト的にも有利なことが多い為、施工者としては当然そうした判断になる訳です。
ただし、標準的な納りというのが意匠的に観点からみて優れているかというと、まあこれも当然のことではありますが、そうでもないんです。
施工性を重視した納まりにすると、取付けの為のスペースをしっかりと確保したりすることになって、決して建物として格好が良くない状態になることが多いです。
そのような状態にならないようにする為、設計者がある程度見た目に対するこだわりを持って設計図を作成していく事が求められます。
そして施工段階に進んだ際には、そうしたスタンスで図面をチェックすることになります。
また、建物の場所ごとに細かく納まりを検討していくと、どうしても意匠的な部分で統一された考えを持つことが難しくなってくるものです。
そのあたりを意識しないで設計を進めていくと、建物の場所によって意匠的な方針が様々にななってしまう恐れがあります。
それでも建物としての用途は果たすのですが、建物としては見た目の統一感も結構重要な要素になってくるものです。
なので、意匠的な基本方針をもった設計者が、同じ建物の中で考え方を統一するなどの方針をコントロールしていく役割を担っていく必要があるんです。
もちろん施工者側でも適当な検討をしている訳ではないのですが…
そこはやはり何を重視するのかという着眼点が違う場合もあって、最終的にはそのあたりの方針を設計者がきちんと決めていくことになります。
ここで書いたのは意匠設計者の立場ですが、これは構造設計や各種設備設計でも同様です。
設計者は建物に対して一貫した基本方針を持って設計図を作図し、施工図や製作図をチェックしていく事が求められる、という話です。
意匠設計者であれば建物のデザインやプランなどを重視し、構造設計者は建物の構造的な部分にフォーカスしていく。
各種設備設計者であれば、それぞれの設備を重視して見ていくことになり、それらを意匠設計者が最終的に取りまとめていく。
というような流れですね。
そうやってそれぞれの分野のプロがきちんとした方針をもって建物を設計していき、施工段階でも同じ視線で図面を確認していく。
そしてそれぞれの分野の整合性をとりながら施工段階を進めていくことによって、設計者の考えがきちんと反映された建物が竣工を迎えることになります。
