実施設計で意匠設計者が作図する図面の種類について今まで説明してきましたが、今回紹介する図面で最後になります。
ちょっと説明が長くなっていますが、あと少しだけおつきあいください。
○建具詳細図
建具表によってそれぞれの建具の細かい仕様は表現されますが、スペースの問題で詳細について図面的な表現をしていくのは難しいものがあります。
建具表はあくまでもリスト形式の図面になるので、細かい部分を図面で表現するのはなかなか難しいものがあるんです。
そこで、建具断面などの細かい部分については、建具表とは別に建具詳細図としてもう少し細かく表現していくことになります。
そうした図面を建具詳細図と呼びます。
建具についての細かい図面である建具詳細図というのは、大抵の場合建具メーカーが設計協力して作図していることが多いです。
そうなると建具メーカーが作成しているリアルな図面が使用されることになり、図面としてはかなり詳細まで表現されることになります。
○部分詳細図
建具以外にも建物には色々細かい部分がありますが、そうした部分をどのような納まりにしたいのか、という設計者の意図はこの部分詳細図で表現していくことになります。
ただ、詳細図をひとつひとつ新たに作り込んでいくには膨大な時間がかかるため、基本的な詳細図のストックがあって、そこからそのプロジェクトに適した詳細を選んでいくことも多いです。
以前から使われている詳細図なので実績もありますし、うまくいかなかった納まりは残りませんから、水準を超えたレベルの詳細には違いありませんが…
正直なところ、使い回し感は拭えません。
こうした詳細図を実績とともに積み重ねていることこそが、企業としての力というか技術力ということになるのだと思いますが。
場合によっては設計してる建物にマッチしない場合もあるので、単純に詳細図を使い回すだけではちょっと情報としては足りなくなる場合も多いです。
○外構図
建物のことだけを考えていると忘れてしまいがちですが、敷地内の建物をどのような環境にするかというのはかなり重要な要素です。
外部の通路をどのような仕上にするのか、どのような樹木を植えていくのかなどによって、建物の雰囲気は驚くほど変わるもの。
なので、建物の外観を意識する上で外構工事は欠かす事が出来ない要素になるんどえすが。、そうした建物の外側に関する計画は外構図に表現していくことになります。
外部は基本的に水をためておく訳にはいかない為、床レベルに必ず勾配が付く事になり、そのレベル調整も外構図では表現していきます。
勾配が1/100だから10m進んで10cmの高低差が必要で…という検討は結構大変なのですが、これをやっておかないと後で大変な目に遭うはずです。
…と、実施設計段階で作図する主な図面はこんな感じになります。
実施設計段階で作成する図面は設計する企業によって違いますし、設計している建物によっても少しずつ違ってくるものです。
なので、ここで「実施設計段階では必ずこの図面を用意します」という断言をするのは結構難しいものがあります。
とは言っても、建物の種類によって作図する図面が全く違ってくるという訳ではありませんし、実施設計の主旨を考えれば方向性も何となく見えてはきます。
基本設計段階で決めたプランをさらに細かく表現して、どのような建物を造るのかを施主や施工者にはっきりと伝える、というのが実施設計でやるべき業務です。
その為に必要な図面がどのようなものになるのかは、確かに建物によって少しずつ違いますけど、詳細を表現していくという目的があれば必要な図面は自ずと分かってきます。
そうした目的で作成される図面が、色々考えていくと先ほど挙げた図面になって、それが一般的な実施設計図で作成する図面と呼ばれるという感じではないかと思います。