SRC造の納まりを検討していくと、柱や梁などの単品で納まりを検討するだけでは、それほど複雑な事にはなりませんでした。
しかし柱と梁が交差する部分について考えていくと、これが結構複雑な事になってくる、というあたりの話を前回は取り上げました。
いきなり複雑な部分を考えるのは難しいので、まずはSRC柱とSRC梁のシンプルな納まりを意識しておき、そこからそれぞれを交差させてみる必要があります。
と言うことで、前回は柱と梁の仕口部分の図面を鉄筋なしで表現した図面を紹介しました。
上図の納まりは確かに一般的な関係を表したものですが、SRC造で構造的に必要になってくる重要な要素が記入されていません。
ちょっと回りくどい表現をしてしまい申し訳ありませんが、今までさんざん取り上げてきた鉄筋が全然記入されていないので、ここで鉄筋を記入してみると…
このような関係になってきます。
なんだか一気にゴチャっとしましたね。実際これでは納まっていないのですが、まずは一般的な鉄筋を配置するとこうなるという例を出してみました。
ここで納まりとして非常に重要になってくるのが、梁の主筋が柱に対してどこまで伸びていれば良いのか、という定着の考え方。
このあたりの考え方は鉄筋コンクリート造(RC造)でも同じになりますので、ここで簡単に鉄筋の定着についておさらいをしてみましょう。
RC造でもSRC造でも同じですが、大梁は基本的に柱へと接続されていて、大梁にかかる荷重を柱へと伝達することになります。
そうした関係性があるので、梁の主筋を柱に対してどこまで定着させるか、という考え方は構造としては非常に重要になってくる訳です。
ちょっと極端な例を出してしまいましたが、構造設計を深く勉強していなくても、上図のどちらが構造として好ましいかというのは直感で分かると思います。
もちろん右側の図面が正解になる訳ですけど、これらの図面の違いは「梁の主筋が柱に対してどこまで伸びているか」という部分になります。
構造の基本的な考え方として、梁の主筋は柱に対して中央よりも奥側まで定着させなければならない、という決まりがあります。
上図の左側の図面はそれを満たしていないので、かなり極端な図面になってはいますけど、見た目として頼りない感じになっているんです。
…と、SRC柱と梁の仕口についての話をしていたはずなのに、鉄筋の定着という考え方についての話にそれてしまいました。
しかしもちろん梁の主筋をどこまで定着させる必要があるのか、という話はSRC造の納まりに大きく絡んでくるものなので、全然関係ない話ではありません。
柱の中央よりも奥側まで梁の主筋を伸ばさなければならない。
こうした構造の基本ルールがあるのですが、実際にその納まりを実現しようとすると、鉄骨柱が梁の主筋に干渉してしまうために上手く納まらないことが分かります。
鉄骨柱は基本的に柱の中心に入ることになりますから、柱の中心よりも奥側に梁の主筋を伸ばそうとすると、どうしても鉄骨柱に当たってしまうんです。
これは鉄骨柱と梁主筋の関係性を考えてみれば当たり前だと思ってしまう話ではありますが…
こうした当たり前の納まりによって、鉄筋の定着という基本的な構造の要望を満たす事が難しくなってくる、という事です。
まさにこれがSRC造の納まり検討をしていく中で大きなポイントになってきます。
鉄骨柱と梁の主筋が干渉してしまうという問題があるのならば、どのような解決方法があるのか、という話は次回に取っておくことにして…
今回はまず基本的な関係性の話として、SRC柱と梁の仕口については、通常の構造的な考え方を反映させると干渉してしまう、という点を覚えておくことにしましょう。