前回の話では、壁を入巾木として納めた場合にどのような問題点が考えられるか、というあたりについて取り上げてみました。
問題点とか言うとちょっと重たい感じがしますが、実際は「あまり綺麗に見えない」とか「納まりが良くない」くらいの話がほとんどです。
しかし事前にある程度検討をしておく事によって、綺麗に見えない部分が解決したり、納まり関係が良くなる場合が多い。
これはそれほど難しい事ではないので、ここではその問題点を紹介する際に、解決方法の案も合わせて紹介していくことにします。
□巾木の天端部分の納まりが綺麗にならない
壁がLGS+石膏ボードという仕様であれば、入巾木として納めようとする際に、石膏ボードを1枚巾木の上で止めて納める事になります。
ここで問題になるのが巾木上で止めた石膏ボードの端部。
石膏ボードであれば壁仕上は塗装もしくはビニルクロスである確率が高いですが、その場合、石膏ボードの端部で仕上をどのように止めるかが問題になってきます。
もう少し石膏ボードの止まりと巾木の関係を拡大して見ていくと…
このような状態になっていますが、実際にはこの図面のように綺麗に納まる訳ではありません。
巾木の高さが60であれば、少しクリアランスを見て63mm程度で石膏ボードを切る納まりにしておくのが一般的ですが…
ここまでの納まりは良くて、その先で石膏ボードの小口に塗装仕上もしくはビニルクロスを施工していくのか、という話になってくると思います。
石膏ボードを切っただけの状態を綺麗に仕上げるのは難しいので、この端部をどのように綺麗に見せるかを考えておく必要があります。
頑張って綺麗に切ってもこんな感じですから。
このような切り口を綺麗に仕上げる為に、石膏ボードの下端に塩ビなどの見切り材を入れる考え方があって、納まりとしてはその方がしっくり来ます。
塩ビ見切りの形状には様々な選択肢がありますが、出来るだけ見えてくる部分が小さい方が綺麗なので、そうした品番を選定すれば上図のような納まりになります。
この納まりが美しいかどうかは別の話として、入巾木にしてなおかつ壁が塗装やビニルクロスであれば、こうした塩ビ見切り材を入れる事も選択肢のひとつとしておいた方が良いです。
石膏ボードの小口部分を綺麗に仕上げるのは結構難しく、なかなか下端のラインが綺麗に通らなかったりするので、塩ビ見切りのラインを綺麗に通した方が美しいかも知れません。
ちなみに、上図のように実際の関係で表現していくと、石膏ボードと石膏ボードの間に1mm程度の隙間があくような表現になってくる事が分かると思います。
こうした関係をCADで表現するのは結構大変ですが、実際の施工ではこのような感じで納まってくるんです。
建具と壁面にチリを設けるのもこうした施工での誤差を吸収する目的があって、図面上でチリを0に設定するのが納まりとしては非常に厳しい理由がここにあります。
これなら出巾木の方が綺麗に見えるかも知れない、と思うかも知れませんが、それも巾木納まりの正解のひとつではないかと思います。
入巾木にしたいというのは大抵の場合意匠設計者の要望であって、施工者側としては一手間かかるので大歓迎という訳ではありません。
その結果としてあまり美しくないのであれば、出巾木という選択肢も当然あるので、そのあたりはどちらの納まりが良いかを比較して判断していく事をお勧めします。
ちょっと変わった納まり=美しい納まり
という図式が成立する訳ではありません。
このあたりを勘違いすると最終的な仕上がりが哀しくなるので、一般的な納まりはなぜ一般的と呼ばれるくらい頻繁に採用されているのか、という事を考えて見ると良いでしょう。