建物の骨組みである構造体をどのように構成していくのか、という部分を表現していく設計図が構造図で、その検討をするのが構造設計者になります。
建物が自重やら外部からの力に耐える事が出来て、そう簡単に倒壊したりしない、というのは建物を利用する私たちにとって割と当たり前の事ではないかと思います。
しかし建物にとって当たり前の性能を確保する為には、構造設計者による様々な検討が必要になってくるものです。
そうした検討や調整の成果物として構造図がある、とも言えます。
今回はそんな構造図を構成する図面の種類を紹介していき、それぞれの図面について簡単な説明を始めてみようかと思います。
まずは構造図にはどのような種類の図面があるのか、という話から。
・特記仕様書
・柱状図
・杭伏図
・各階伏図
・軸組図
・杭リスト
・基礎リスト
・柱リスト
・梁リスト
・壁リスト
・床リスト
・雑詳細図
ざっくりとした分類になっていますが、構造図は大抵の場合上記のような図面によって構成されています。
少し前までは意匠図について説明をしていましたが、意匠図は建物についての様々な情報を網羅する必要がある為、図面のボリュームは結構多めでした。
しかし、構造図では本当に建物の骨組み情報だけを記載している為、図面の枚数としては比較的少なくて済む傾向にあります。
もちろん図面の枚数が少ないからと言って、その情報が重要ではない、という話ではありません。
各種構造体の大きさや必要な鉄筋量など、構造図に記載されている内容は非常に重要なものばかりなので、慎重な取り扱いが必要になります。
例えば800mm×800mmの鉄筋コンクリート柱、という指定が構造図にあったとします。
コンクリートの柱が800mm×800mmだから、そこに何らかの仕上をすることを考えると、最終的な仕上としてはもう少し大きくなる。
意匠図的な考え方をするとそのような考え方になります。
例えば鉄筋コンクリート柱に石膏ボードを直接貼っていく場合、「GLボンド」と呼ばれる接着剤で貼っていく事になります。
その場合はコンクリート面から25mm程度が仕上面という事になって、納まりとしては下図のような関係になってくる訳です。
だけどこの図面は単純に仕上の事しか考えていない図面で、実際には800mm×800mmの鉄筋コンクリート柱と言っても様々な仕様があるんです。
・コンクリートの強度
・主筋の径と本数
・HOOPの径とピッチ
最終的な見た目としてはコンクリートに隠れてしまいますが、構造的な観点から考えると上記のような項目があって、それによって柱の強度が変わってくることに。
そう考えると、当たり前の話ですが、単純にその大きさを守って鉄筋コンクリートの柱を造るだけではダメという事になる訳です。
実際にもう少しリアルな断面図にすると、柱まわりはこのような断面図になります。
コンクリートだけでは建物の構造体としては成り立たず、鉄筋があってはじめて構造体として機能するようになる。
これは建築の基本的な考え方になっていて、そのあたりの具体的な考え方を構造図では示していく事になります。
このあたりの細かい仕様を、構造的な計算をしながら決めていく作業をするのが構造設計者であり、その結果を図面で表現するのが構造図です。
図面の枚数が意匠図に比べて少ないとは言っても、建物の性能を確保する為の最も重要な図面である、ということが言えると思います。
構造図を構成する図面について今回は紹介しましたが、次回からはそれらの図面について、それぞれ簡単な説明をしていこうと思います。