施工者が作図する図面の枚数は膨大な量になって、それぞれの図面をまとめていくのは大変です、というような話を前回は繰り返してしまいました。
図面をまとめる事が大変だということはつまり、実際の施工をスムーズに進めることが大変だという事でもありますが…
施工者が意識しなければならないのは図面だけではありません。
図面にプラスして、施工を進めていく上では「どのような順番で施工を進めていくか」という計画を立てる必要があり、出来るだけ手戻りなく工事が進むような検討をしていく必要があります。
施工図や製作図を確認する際にある程度現場での施工をどうするかを検討しますが、どうしても図面だけで施工の順番などを管理するのは難しいものがあるんです。
現場で工事の管理をする為には図面だけではなく工程表が必要になり、施工者は工事の順番などを考慮しながら工程表を作成していく事になります。
そして、その工程表をもとにして現場を管理していきます。
その工程を守る為には、必要な時期に工場で製作される製品が納品されている必要がありますから、図面の管理とあわせて工事工程をコントロールしていくことになります。
施工者は現場の施工を全て管理していく事になりますから、図面と工程とコストと安全と…という感じで様々なものを管理していく必要がある訳です。
また、現場での施工は人間の手でやる訳ですから、図面通りに進まないことも多々あります。
例えば図面ではコンクリートの壁がスッと一直線に伸びていますが、実際には型枠の精度やコンクリートの側圧などで多少ふくらんでいて図面通りではなかったり。
LGS下地に石膏ボードを貼る場合でも、石膏ボードを二枚貼ればそこには図面では表現しきれない隙間が多少は出てくることになります。
施工者としては、そうした図面と現場の違いを考慮に入れて、ある程度余裕のある納まりの検討をしていく必要があります。
全然逃げがない納まり検討で、図面通りに現場を施工をしようとすると、図面と現実の違いをすぐに知ることになるはずです。
そうなると次からは経験として、図面通りに現場はいかないという現実を知って、逃げがある納まりの検討をするようになりますが…
最初からそうした認識をもち、少し余裕のある納まりの検討を図面でもしていくことで、図面と現場の違いを吸収することが出来るようになります。
施工者側で施工図や製作図に携わる人は、図面のボリュームが膨大になる為に、ほとんど現場を見る時間がなく図面だけを見ていく傾向にあります。
これがちょっとした矛盾というか、図面を難しくする要因でもある訳ですが…
建物の規模にもよりますが、現場を見ながら図面をまとめていくのは非常に困難ですから、図面に特化した担当区分をするのは仕方がない事ではあります。
現場を進めていく上で基準になるのはあくまでも図面なのですが、その図面をまとめる人はあまり現場を見ない、というのはちょっと変な感じがしますよね。
今では図面を作図修正するツールとして「CAD」と呼ばれるソフトが使用されますが、CADにはある程度専門的な知識とスキルが求められます。
もちろん少し教わればすぐにCADを使えるようにはなるのですが、膨大な図面をまとめる為には「操作できます」というレベルでは難しい場合も多いです。
現場を見ない人が図面をまとめるという微妙な矛盾は、そうした専門性の高い仕事に図面がなりつつあることが原因のひとつだと言えるでしょう。
施工者として組織の構成は様々ですが、色々突き詰めていくと、どうしても分業ということになっていき、現場を見ながら図面をまとめるというのは難しいことなのかも知れません。