前回は建物の基本的な方針を決める為の「基本設計」について、具体的にどんな図面を作図していくかも含めて説明をしてみました。
細かい部分の検討を基本設計の段階で進めても、手戻りになる可能性が高いので、まずは建物の位置やプランや高さなどを決めていくという流れになります。
そうした基本設計での検討によって、ある程度建物の形状や高さなどの方針が決まってきたら、そこで検討した内容をもう少し具体的にしていく段階に進みます。
それが今回取り上げる「実施設計」という段階です。
どのような建物を計画しているかを表現する図面は、基本設計段階では平面図・立面図・断面図・矩計図などの「一般図」と呼ばれる図面でした。
もちろん一般図は建物の方針を示す為に必要な、非常に重要な図面ではありますが、一般図だけでは細かい部分までを表現することは難しいです。
なので、基本設計の次のステップである実施設計段階では、建物についてもう少し具体的な表現をしていく為に、必要な図面が結構増えていきます。
必要になる図面は建物の用途などによって少しずつ変わってくるのですべてを取り上げることは難しいのですが、主に以下のような図面を作図していきます。
・平面詳細図 : 平面図より細かくプランを表現した図面
・展開図 : 各室を横から見た図面で壁に取付くものを表現する
・各室詳細図 : トイレや浴室などのちょっと特殊な部屋を表現した図面
・建具表 : 建物に取り付けるドアや窓などの大きさや仕様を全て表現する図面
・部分詳細図 : 意匠的に重要になってくる細かい部分の納まりを表現した図面
実施設計段階で作成する図面は上図のような感じになっていて、項目としてはあまり多くはありませんが、図面の枚数としてはかなり多くなってくると思います。
それぞれの図面を、基本設計段階の図面と整合を取りながら、たくさんの枚数を作図していく事が求められる訳です。
これはかなり控えめに表現しても、結構大変な作業だと言えるでしょう。
実施設計の段階に入って細かい部分を表現してみたら、一般図で表現していたような関係で納めることが難しい、という事が分かったりする場合も。
それこそが細かい部分を図面で表現していくことの意義なので、このような微調整をしながら設計の業務を進めていく事になります。
そうした色々な調整の結果として、先に作図していた一般図も合わせて修正しなければならない、みたいな状況になる事も多いです。
まだ設計段階なので色々な変更がありつつも、それに合わせて最終的には色々な種類の図面を修正してまとめていく事になります。
当たり前の話ではありますが、作成する図面が増えていくに従って、計画を変更した際に修正しなければならない図面の枚数はどんどん増えていくことになります。
だからこそ基本設計段階では、少ない枚数の一般図で検討や調整を進めた訳ですけど、いつまでも一般図だけという訳にもいかないんですよね。
ということは、図面修正の仕事はどんどん大変な方向になっていく訳ですけど、まあこれはある程度仕方がない話なのだと思います。
細かい部分を表現することで見えてくることも当然ありますから。
という事で…実施設計の段階では、基本設計で作成した一般図をベースにして、もう少し細かい部分の表現した図面を追加していく事になります。
図面を追加していく段階では、一般図も含めて図面を修正していく事も結構あるので、作業としてはかなりのボリュームになっていくはず。
ただ、ある程度の変更は出てくるのは当然のことなので、より良い建物を造る為に、色々な変更調整をしながら実施設計の業務は進められていくことになります。
こうして実施設計の業務が完了した段階で、施工者に設計図書として資料を一式発行する事になる訳ですが、このあたりの話は次回に続くことにします。